50話 動物園に誘っちゃダメですか?
「動物園にいきたいです」
突然言い出したのは瑠璃だった。
「梅雨だよ」
「梅雨よ」
「梅雨だぞ」
そう今の季節は梅雨。
わざわざ今行かなくても良いだろうと思う。
「そんなの分かってます。だからこそなんです」
全く言っている意味がわからない。
「何言ってるんだ、雨降ってたら面倒だろ。傘じゃまになるし」
「それはそうですけど……」
僕が否定的になると瑠璃は不満げに口を尖らせる。
「どうした?なにか理由があるのか?」
皆越先輩はそんな瑠璃をかわいそうに思ったのか、理由を尋ねる。
「よくぞ聞いてくれました」
それを待っていたかのように元気に話し出す瑠璃。
案外さっきのも演技だったのかもしれない。
「実はですね、ここの近くの動物園なんと、この時期は雨の日入場料が半額になるそうなんです!」
自信げに胸を張る瑠璃。
「へー(棒)」
「なんで泰はそんなにドライなんですか。なんでこの時期ジメジメてるのに乾いてるんですか」
なんでってわからないのだろうか。
「瑠璃が面倒くさいからに決まってるだろう」
「えーホントは嬉しんじゃないですか?このこのっ」
指でほっぺをツンツンしてくる。
だからそういうところが面倒くさいのだ。
ひとしきり僕のほっぺを弄り倒して満足したのか、自分の椅子に座り直す瑠璃。
「とにかく私は動物園に行きたいんですっ」
「もう煩いから行ってやりなさいよ泰」
「何言ってるんですか?弥久先輩も一緒に決まってるじゃないですか」
不思議な顔をする瑠璃。
「えっ、私もなの」
「はい、もちろんです。もちろん皆越先輩もですよ」
「動物園かぁ。何年ぶりになるだろうか」
皆越先輩はもう行く気満々らしい。
「私はてっきり、「泰は私のものだからついて来ないでくださいっ」って言うかと思ったのだけど」
「そんな、大好きな弥久先輩を置いていくわけないじゃないですか」
「大好きって……わかった行く」
弥久先輩はあっさりと意見を変えてしまった。
「泰の予定今週末空いているみたいのですが皆さんはどうですか」
おいちょっと待て。
「なんで、僕の予定を知ってるんだよ。というか、まだ行くとか言ってないんだけど」
「良いんですか?PCの隠しホルダーの場所とパスワードお義母様に教えますよ」
「なぜ知って……いやそうじゃない、そんなのないから」
「なんでって、お義姉様に教えてもらったんですけど」
「あの姉貴……いや弥久先輩そんな目で見ないでください。違うんです」
やばい、やましいものを隠しているわけではないが先輩の目が痛い。
あと義ってついているのが気になる。
「皆越先輩、プリンターってどこにありましたっけ?」
「ん?プリンターなら……」
「分かったから、うん。行く、行きますから。許してください瑠璃様」
「わかればよろしです」
これが人生で最も価値の低い謝罪になると思う。
「で、予定は合いそうですか?」
「私は大丈夫だぞ」
「うん、私も大丈夫」
「では、決まりですね。9時開園みたいなんでそれくらいにゲート前に集合でいいですか。泰はちゃんと私が迎えに行きますから安心してください」
安心できないことはわかった。
まあ、何だ。楽しみに待つとしよう。
そして週末はすぐにやってきた。




