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ライトノベルじゃダメですか?  作者: 東雲もなか
始まりの文芸部
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4話 屋上イベントはダメですか?

 優しい春の風が吹き抜ける学校の屋上。


 そこに1人の女子生徒が立っていた。


 閃く黒髪は(あで)やかで、立ち姿はミロのヴィーナスのように美しかった。



 夕日が街をオレンジ色に染め、雰囲気を最大に盛り上げている。



「ガチャ」


 重たい金属の扉が開く音がする。


皆越(みなこし)先輩来てくれたんですね。」


「それで用ってなんだ?」


 先輩の期待感の込められた声により緊張が高まる。


 僕は伝えたいことがあり、先輩を屋上に呼び出しておいたのだ。



「先輩、大事な話があって来てもらったんです」


 駆ける鼓動が僕を追い越していく。


 聞こえてはいやしないかと心配になるほどに。


「先輩、実は先輩のことがっ……」


 肝心な時に言葉に詰まってしまう自分が情けない。


 この先のセリフなんてもうすでにわかっているだろうが、先輩は何も言わず静かにこちらの次の一投を待ってくれている。



「皆越先輩のことが好きなんですっ!」


「(言ってしまった……)」


 顔が熱くなるのを感じる。もう先輩の方を恥ずかしくて向けなかった。



「泰君、うれしい……私も君のことが好きだよ」


 そのセリフを聞き、やっと顔を上げる。


 先輩は優しく微笑んでいた。


 うれし涙なのだろうか、その瞳の雫は夕日に照らされてキラキラと宝石のように輝いていた。



「先輩……」


 僕は自分が抑えきれなくなって先輩の方へ歩み寄り肩に腕を回す。


「泰君……」


 先輩もそれを受け入れる。目と目が合い、何とも言えない高揚感を得る。


 僕は唇を近づけそのまま……


「んっ……」


 そのキスは甘酸っぱい恋の味がした。



 寄り添う2人から延びる影は、来た時より少しだけ薄く長くなっていた。




「2人は部室で何をやっているの?」


 弥久(みく)がまるで汚物でも見るかのような視線を向ける。



 そう、この茶番は部室で行われていた。


 屋上でも何でもなくただの一般的な教室で。


 部屋の大半をラノベが占める教室を一般的と呼ぶかはさておき、よくアニメなどで出てくる屋上などでは断じてない。



「ほら、こういう屋上イベントって物語の世界では一般的ですけど、現実ではそうそう見ないよなと思いまして」


「確かに屋上封鎖されてるしね」


「だろ?」

「でしょ?」



「でもほかの学校では入れるところも、あるらしいって言う噂も聞くけど」


「そうなんですね。てっきり、どこもかしこも入れないところばかりだと思ってました」


「うん。ほらっ、こことか開放してあるってHPに書いてあるわよ」


 弥久がスマホでどこかの学校のHPを開いている。


「どれ?見せてくれ!」


 皆越先輩は、机から乗り出し目を輝かせていた。



「ふむ。確かにいくつかあるが、どこもここから遠い学校だな。大体私はもう高校3年生だしな……」


 先輩は受験生だったらそれだけの理由で、進路を変えるのだろうか。


 どこまでラノベが好きなんだよ……



「皆越先輩。文芸部って取材とかやったりしないんですか?ほら小説家とか取材で色々回ったりするとか聞いたことありますが。」


「唐突だな。ん?その手があったか……」


 そう言うと先輩は立ち上がり何やらぶつぶつと言いながら部室を出ていった。



「ゆかりは何をしに行ったの?」


「さあ?何しに行ったんですかね?」


 何をしようとしているかは大方、想像がつくが明確な方法までは分からなかった。




「弥久先輩もああいうテンプレみたいな告白に憧れとかありますか?」


「そうね、まあ多少はいいなとは思うわよ」


「へー意外ですね。てっきり「あんた馬鹿じゃないの、そんな豚どもが喜びそうなシチュエーション好きなわけないじゃない」って言うと思ってました」


「あんたの中の私のイメージって何なのよ……」


「じゃあ先輩もやってみますか?」


「ばっ、ちょっ、ちょっと待って、心の準備が……」


「冗談のつもりだったんですけど……」


「--ツ! もう知らないっ!」


 そういうと弥久先輩は、喋らなくなってしまった。




「みんな、屋上に入る許可が取れたぞ。今すぐ行こう」

 部室に帰って来るや否や、皆越先輩はそう言うのだった。

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