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ライトノベルじゃダメですか?  作者: 東雲もなか
変化する文芸部
48/216

48話 ファンだったらダメですか?

 いつもと変わらぬ文芸部部室。


 ただ1つ違うのは、昨日からそこに蒼井(あおい)瑠璃(るり)という新入部員が居ることだ。


 瑠璃は相も変わらず、僕の隣の席を陣取りベタベタしてくる。


 最初のうちは逃れようと試みることもあったが、2日目にしてすでに諦めている。



「そう言えば瑠璃と言ったか?君はどんな小説書いているんだ?」


 と皆越先輩。確かに僕も気になる。


「いろいろ書きますよ。バトル系だったり恋愛だったり。推理小説とかも書いたことありますし。あ、そうだ。この間ちょうど書き終わったのがあるので見ますか?」


 そう言うと、通学鞄の中から200枚程度の原稿用紙を出してきた。


 その時にちらりと通学鞄の中が見えた感じではどうやら原稿用紙しか入っている気がしなかったのだが、学校に何をしにきているのだろう。



「はい、これです」


 僕の思いを他所(よそ)に瑠璃は、皆越(みなこし)先輩に手書きの小説を渡していた。


「ちなみにどんな内容なの?」


「これは、(ゆたか)の小説を読んだ後に自分もこんなの書きたいな〜と思って書いたやつなのでそんな感じですよ」


 どう言った内容なのかわかるにはわかるが、実にふわふわした言い方だった。



「こっ、これはもしかして!いや、もしかしなくても!」


 早くも10数ページ読み上げた皆越先輩が大声を上げる。


 その声に驚いたのか、瑠璃の体が少し跳ね涙目になっている。


 ちなみに僕と弥久(みく)先輩は多少は驚いたが、瑠璃ほどではない。


 落ち着いて、読んでいた本から皆越先輩へと視線を移した。



「知らなかったら知らないと答えてもらって構わないんだが。藍井(あおい)(あお)だったりしないか?」


 皆越先輩は、若干興奮気味な様子で瑠璃の両肩を掴む。


 突然のことで(まぶた)に涙を溜めながらも返答しようとする瑠璃。


「そ、その……はい……私です。私のペンネームです」


 か細く、しかし確かに芯のあると感じる声だった。


「やはりそうだったか。普段の作風とは若干異なってはいたが、このストーリーの運びや、言葉の言い回し、藍井先生なのではないかと思っていいたんだ」


 後輩相手に先生とまで言う先輩。


 かなり上がっているのだろう。


 大した時間を共にしたわけではないが、こんな皆越先輩を見たことはなかった。


「その1つ聞いても良いですか?」


「ん?なんだ?」


「その、藍井……先生、って言うのは、」


 僕は普段よっぽど気に入った本の作者でもない限り書いている人というのを意識したりはしない。


 そもそも、題名は知っていても作者は知らないと言う人が殆どなのではないだろうか。


 僕も彼女?の本を読んだことがあるかもしれないが、その名前までは記憶になかったのだ。



「なんだ、知らないのか泰くん。彼女は最近巷で有名な作家だよ。突如ウェブ小説界隈に彗星の如く現れた大型新人だ」


 先輩の紹介にさっきまでの怯えていた様子とは違い「えへへ」と可愛らしく照れている瑠璃。


 その単純さに今更ながら驚いてしまう。



 一呼吸置いて先輩は説明を続ける。


「まず何と言っても、先生の処女作にして代表作『紅葉道(もみじみち)』だ。あれはよかった」


 しみじみと噛み締めるように言う先輩。


 僕としては散々「あお」を押していたのにここにきて赤系の色に変わったことに驚きを隠せない。


 弥久先輩に関しては「えっ……」と小さく声を上げていた。


 そんなことはお構いなしに続ける皆越先輩。


「通学路が同じ以外に共通点のなかった男女2人が、互いを意識しだすまでの過程。(うぶ)な彼らの、触れれば切れてしまいそうなほど繊細な心理描写。それを引き立てるのは真夏の紅葉の様子。それは私をも納得させるものだった」


『やっぱり、あおじゃねーか!!』


 僕たちは2人して叫んでいた。


「どうしたんだ?」


 どうしたも、こうもないだろう。何が紅葉だよ。やっぱりあおだった。


 まず登場人物からして青い。


 さらに何だ?赤だと錯覚していた風景まで蒼かった。


 もう物語全部真っ青だった。



 まあ確かに、皆越先輩の話を聞く限り面白そうだなとは思った。


 でも、そんなことどうでも良くなるくらいに気になって仕方ない。



 僕たちはとりあえず上がってしまった息を整える。


「何はともあれ、そんな尊敬する人に会えたならよかったですね……」


 やっとのことで言葉を絞り出す。


「ああ、とてもラッキーだった」


 無邪気な笑顔を見せる先輩。


 その理由が僕じゃないのが少しだけ悔しかった。

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