43話 諦めを付けたらダメですか?
桜田 弥久
部室に1人で他の部員を待っているとき、ふと先日のことを思い出す。
文化祭の最後で少し苦い思いをした私は、その後なんだかんだ自分の心に折を付けることができた。
あれから私はいっぱい泣いた。
どうしたら良いかわからない感情が胸から溢れてきたのだ。
しかし、泣けばそれだけエネルギーを使いやがて心もその涙で洗い流されたようにすっきりする。
そうやって私はこの恋と言っても良いかどうかわからないものを終わらすことができた。
身を引くと言えば聞こえは良いかもしれない。
でも、私のこれは逃げと言った方が近いだろう。
分かり切った勝負をするのが怖かった。
最後に傷つくことを恐れて、始まらないまま終わらせたのだ。
なんて臆病なのだろうと自分でも思う。
そんな私と比べて泰は……
彼は99%結果が決している勝負をしている。
私とは違って彼は強いなと思う。
そんな彼を今は応援したいという気持ちが強い。
もしくは、そう思い込いこませているだけかもしれないのだが。
だから私は、泰を、彼の恋を応援しようと思う。
好きな人に幸せになってほしい。
もしダメだったとしても、その時は私の方を見てくれるかもしれないと淡い希望も載せて。
もちろん、ゆかりとの恋が実ってくれればそれに越したことはない。
でも、そのくらいなら許してくれないだろうか。
廊下に響く上履きの音。
それは、だんだんと建物の一番奥にあるここ、文芸部部室に近づいてきた。
ゆかりが来たのだろうか、それとも?
何だか緊張していた。
「ガラッ」と少し建付けの悪い扉が開かれる。
私は、自然な感じをイメージしてそちらを振り向く。
「あら、桜田さんですか。今日は早いですね」
入ってきたのは、池田先生だった。
さっきまで緊張していたのがバカみたいだ。
「こんにちは」
私は、挨拶の言葉を発して外の景色を眺めた。
「何だか桜田さん可愛く……いえ、綺麗になりましたね」
「ひょえっ」
突然のことに思わず変な声を上げて振り返る。
先生は何を言っているのだろうか。
「ウフフフ。突然すみません。何だか少し垢ぬけたというか、大人びて見えた気がしたので」
続く「何かありましたか?」という問いに思わずドキリとしてしまう。
池田先生は、まるで私の心情を見越したように笑うと、
「私から聞くことはありませんがという前置きをして。何かあれば相談してくれても良いのですからね。私は、貴方の先生であると共に、学校の、いいえ、貴方の人生の先輩でもあるのですから」
先生は、私のことを大人びて見えたと言ったがきっと今の先生の方が大人びている。
「そうそう、今日は雪村さんから報告があるそうですよ」
報告?と思ったが、それももうしばらくすればわかることだ。
わざわざ今聞く必要もないだろう。
やがて、ゆかりが来た。
その数分後に泰も部室へやってきた。1人の女子を連れて。
私の心はもう少しだけかき乱されそうだ……




