35話 落ちを書かなきゃダメですか?
僕がエドに渡した原稿は次のような感じだ。
親を亡くした少女は、とある神社に迷い込む。
神社は人が他に居る気配はなく、どこにでもあるような田舎の少しさびれた神社だ。
神社の奥には申し訳程度にお供え物があることから、最低限管理をしている誰かくらいはいるのだろうと想像できる。
1人寂しさに明け暮れている少女くるみが賽銭箱の隣に腰かけていると、そこに声がかかる。
声の高さ的に少年だろうかと思い、辺りを見回してみるが誰も見当たらなかった。
「ここだよ!!」
突然の声にびっくりして振り返ってみると、さっきまで誰も居ないと思っていたはずの場所に、1人の少年が立っていた。
あまりにも驚きすぎてどうしたらいいのか分からないくるみは、ただその少年を見つめることしかできない。
「君って1人?奇遇だね僕も1人なんだ!でもこれでもう君と僕、2人だね!」
そんな少年の明るく、元気がある声を聞くとなんだか今まで冷たかった体に熱が宿る感覚があった。
それからというもの、くるみはよくその神社に通うようになった。
まあ、そこ以外に行く当てもなかったこともあるだろう。
ただし、それだけでなかったのも確かだ。
居場所のなかった彼女には大変居心地が良かったのだ。
なので、くるみが少年に心を開くのにそう時間はかからなかった。
以下、くるみと少年の日常が語られる
「なるほどね」
僕がコーヒーを半分くらい飲んだ時、エドは読み終わったらしかった。
もともとそれ程の文字数がないので、時間はかからない。
「それで、どこに悩んでるのですか?見た感じ悪いところは見当たりませんが。それに、ほとんど完成しているじゃないですか」
確かにエドの言う通りだ。
すでに物語は、ほぼ完成している。
だがしかしだ。ほぼ完成しているだけで、まだ終わっていないのだ。
「確かに、そうだけど……」
「そうだけど?」
「この後の、結末をどうしようかと悩んでいて」
物語で最も重要な結末。
それをどうしようか決めあぐねていた。
「悩んでる?どんな風に?」
「それは……ストーリー的にはバッドエンディングにした方が良い気がするんだけど。でもそれは、自分の感情的にはやりたくなくて」
「なるほど」
エドはそれだけ言った。
自分で考えろと言う事なのだろうか。
自分ではさんざん考えた。
実は、ここまでは結構前からすでに書いていたのだ。
それから結末だけを悩み、未だに書けないでいる。
作品的を良いものにするためのストーリーと自分がやりたいストーリー。
その相反する2つで悩んでいるのだ。
「私は、平和なまま終わる物語も良いと思いますよ」
「好きとは言わないだね」
「察してください。でも、作者が好きなように書いて悪いことなんてないと思いますよ。楽しんで書いているのは、読んでいる側としては分かりますしね」
「そうか、そうだよね」
誰かを楽しませるには、まずは自分が楽しまないといけないと言うことを聞いたことがある。
それはその通りなのだろう。
それに、これは弥久先輩に捧げるものでもあるのだ。
せめて物語の中くらいは幸せでいてほしいと思う。
そうすると、どうすればいいかは自ずと決まってくるだろう。
誰かに何か言われようとも、自分の書きたいものを書こうと思う。
どうせ、自己満足みたいなものなのだ。
結果として、その物語は何気ないほのぼのとした日常のまま、これといった締まりのないまま終わらすことにした。




