33話 テストを受けなきゃダメですか?
結局、勉強会はなんだかんだで続けることとなった。
せっかくなので分からないところは無いにしても、少し自信のない部分は皆に解説してもらったので完璧だ。
そんな感じで、準備万端で迎えたテスト当日。
順調に各教科をこなし、その日は無事に終わった。
手ごたえはあったので割と良い点数が取れていたと思う。
さすがにテスト期間に入ると勉強会も無いので、家に帰って次の日の教科の最終確認でもしておいた。
そして問題が起きたのは次の日の1限目。
国語のテストだった。
クラスの全員が席に着き、黙って問題用紙が配られるのを待っている。
教室は当たり前だが静まり返っていて、時計と先生が歩く足音のみが一定のリズムで鳴っていた。
配られた用紙は1枚だったので、もしかして足りてないのかとも思ったが、横目で確認して他の人も同じだったので特に何もせずにじっと待っていた。
チャイムが鳴り響き、先生の「初め」の合図で一斉に表を向ける。
表を向けた時、一瞬頭がフリーズした。
【問一 今回試験範囲の物語を覚えている限り全て記しなさい。(題名、作者名含む)】
場の空気が凍っているのが分かる。
みんなの思考も止まっているのだろう。
確かに暗記問題だとは聞いていた。
「(まさか、ここまでとはな……)」
頭脳が大人の漫画に出てくるFBIみたいなことを言ったが、ただ言ってみたかっただけだ。
ここ以外で使える気がしなかったし。
それはさておき、どうしようかと思う。
暗記問題だと聞いていたのでほとんどは覚えている。
全部は無理にしろ、解けなくはなさそうだ。
それにしてもあの先生らしい問題だと思った。
先生にとっては簡単かもしれないが、普通の人はこんな事できない。
僕だってヒントをもらってたから良いものの、知らなかったら確実に詰んでた。
勉強会をしてくれた先輩に感謝しなければならない。
他の人は知らないが、とりあえず自分だけは助ってよかった。
控えめに見回してみると皆頭を抱えているようだった。
これ以外に変な問題のテストは無く、無事に終えることができたのだった。
テスト明けの部室。
「あの国語の問題なんだったんですか?」
先輩の教え方的にどの学年でもあのテストが出ていることは予想できていた。
そこで、何か知っているだろうと踏んで尋ねてみたのだ。
「ビックリしただろ?」
質問に質問で返す皆越先輩。
「ええ、まあ。でも、あんなの完全な初見殺しじゃないですか」
僕はある程度知っていたから良いが、何も知らなかった人にとっては戸惑ったことだろう。
「いや、私も初めてみた時はそう思ったが、意外とそうでもないぞ」
皆越先輩にとっては簡単だとしても、その他の人ができるわけではないということを理解しているのだろうか?
僕も記憶力は良い方だと思うが、流石にいきなり教科書全文を書けと言われても自信はない。
覚えようと思ったからこそできたというものだ。
「なんだ?疑っているようだな」
「そりゃ、まあ、はい……」
「テストが帰ってきたら分かると思うのだが、あれはあれで考えて作られているのだよ」
僕には先生が作るのが面倒くさくて手抜きしたようにしか見えなかったのだが。
でも考えてみれば、ただ楽をしたいだけのテストを作ったら他の先生から作り直しさせられるような気もする。
そうなってないということは、何かしら周りを納得させるだけの理由があるのだろう。
「ほう……。何か気づいたようだな。まあ良い。ただ教科書を写すだけと言っているが、それだけでも十分に学力を評価する材料になるのだよ。例えばそうだな、簡単な例で言うと漢字だな。これも普通のテストより、実用的な状態で試せるだろう?それに文脈を読む力などもなければ元の通りの文章を書いていくのも難しいと思うぞ」
先輩がテストについて解説しているのを聞くと、確かにその通りなのではないかと思えてくる。
「それにだな、採点に関しても減点式と加点式をうまく組み合わせて使っている。だから、普通に授業を受けている限りはそこそこの点数が取れるようになっているのだ」
意外な事実に衝撃を受ける。
あんなに適当そうなテストでもそこまで考えて作られていたなんて、少し感動すら覚える。
噂をすればなんとやら、池田先生が入ってきた。
「いやー全クラスを受け持っていると流石に採点が大変ですね。息抜きに来てしまいました」
「先生すみません。僕先生のことを誤解していたかもしれません」
さっきまでとんでもない先生だと思っていたことを詫びる。
「何のことかわかりませんが、許しますよ?それにしても作るだけでも簡単にできて良かったですよ。それっぽいことをまとめて提出したら、皆さんまんまと騙されたみたいで。お陰で楽できます。……?お2人ともどうかしましたか。その、視線がどことなく痛いのですが……」
せっかく良い話風にまとまりそうだったのに、先生はそれを崩した。
「先生、さっきの僕の謝罪返してください」
「あっ!そういえば仕事思い出したな〜仕事しないとな〜」
そうやって先生は微妙な空気だけ残して部室を出ていった。




