32話 学習会したらダメですか?
高校初めてのテストが1週間後に迫って来た放課後。
僕はHRが終わるなり、すぐに昇降口へ向かった。
下駄箱は、部活動が止められているためか混んでいた。
帰るわけではないのでわざわざここを通りたくないと思ったが、部室棟へ行くためには仕方がないことだ。
人の波をかき分け、そのまま出口へ向かう。
部室棟へは上靴のまま行けるようになっているので、この中で靴を履き替えなく良いのが唯一の救いだった。
部室棟に入っても、いつも聞こえてくる吹奏楽部の演奏は聞こえてこない。
それどころか人の気配もせず、耳鳴りがするほど辺りは静まり返っていた。
部室までたどり着くとそこには皆越先輩と池田先生がすでに待っていた。
待つまでもなく、弥久先輩もやってきた。
「さて、そろそろ始めるか」
みんなが席に着いた後、皆越先輩の声を合図にするように各々が勉強を始めた。
「今更だけど、みんな学年が違うから教えあうとかできないわね」
「まあ私なら2人に教えられるし、私もまあ、困ってないし大丈夫だろ」
「皆越先輩って勉強できる人だったんですね。と言ってもできそうな感じはしますけど」
「そうだな。人並みには」
人並みとは言ってるがそれは謙遜だろう。
僕が思うには学年で上位には入っている気がする。
「人並みね……」
「どうしたんですか?」
弥久先輩は、さっきの皆越先輩の言葉に思うところがあるようなつぶやきをした。
もしかして、皆越先輩は意外と点数が低いのだろうか?
まあそれはそれで想像はできそうだと思ってしまう。
「泰、ゆかりの学年の順位知ってる?」
「皆越先輩の順位ですか?」
「おい弥久その辺にしてくれ」
皆越先輩が止めようとするが、弥久先輩は構わず続ける。
「はぁ……あのね、ゆかりが人並みならこの学校の生徒全員、平均以下になるでしょ!あなた何時も学年1位なんだから」
「え!?そうだったんですか?」
話の流れ的に皆越先輩の成績が良いことは予想ができた。
でも、さすがにトップだとは思わなかった。
「でも先輩いっつも本ばっかり読んでますよ。今でも教科書に隠して読んでますし」
「そうそう、皆越さん。さすがに授業中にそれやるのはやめてくださるかしら。憖成績が良いだけに、こちらとしても注意し辛いのよ」
池田先生が先輩に対しての不満を漏らしていた。
「ほんと不公平よね。真面目に勉強している人よりこんなのが成績良いなんて」
皆越先輩を見ると色々言われてしょんぼりしてきていた。
若干涙目だ。
「私だけじゃないもん。弥久だって勉強してないくせに成績良いもん」
「なぁっ!私は家ではちゃんと勉強してるから!ていうか知ってて言ってるでしょ、一緒にしないでよ」
「ちなみに順位はどれくらいなんですか?」
「…………」
「桜田さんの順位はだいたい10位近辺をうろうろしているくらいでしょうか」
「弥久先輩、ギルティです」
十分成績の良い弥久先輩は、皆越先輩のことをとやかく言う資格はないと思う。
「そう言う泰はどうなのよ」
「いや~僕も平均位ですかね(汗)」
まさか自分に矛先が向いてくるとは思わなかった。
やばい、銃を向けて良いのはその覚悟があるやつだけみたいなことを何処かの海賊が言ってた気がする。
今更思い出しても遅いけど。
「泰君は確か次席で入学してませんでしたっけ?」
誤魔化そうとしたが、空気を読まなかったのか逆に読んだのか先生がばらした。
『ギルティ!!』
鬼の首でも取ったかのような先輩たちだった。
「でも思ったんですが、僕たち勉強会開く必要あったんですか?」
「そう言われるとあったとは言い切れないな」
「全く……あなた達、そんなくだらないこと言ってないで真面目に勉強しなさい」
なんだか言われるとやる気がそがれるが、反抗する気もないので素直に従っておく。
他2人も根が真面目なのもあってか、自分の課題なり何なりに取り掛かっていた。
「先生、国語のテストってどんな出題形式なんですか」
せっかく先生がいるのだし聞いてみた。
「答えると思いましたか?雪本君」
答えてくれなかったが、それもそうかとあきらめる。
「池田先生の問題は教科書丸暗記しておけば大丈夫だぞ」
「そうね丸暗記しておけば大丈夫ね」
しかし先輩がヒントをくれた。
似たような問題が出るわけだし、素直に聞いておこうと思う。
丸暗記で解ける問題なら割と簡単そうだ。
「暗記問題みたいな感じですか?」
「暗記問題だな。さすがにこれ以上は教えないが。まあ、1週間後にはわかることだ」
なんだか引っかかる気がするが、範囲なんてたかが知れてるし大丈夫だろう。
まずは、教科書を読み返すことから始めてみた。




