30話 無理しちゃダメですか?
気が付くと僕はベッドに寝ていた。
何で寝ているのだろうかと考えると、先ほど倒れたことを思い出した。
「起きたのか?体は大丈夫か?」
横を見てみれば先輩2人が心配そうにこちらを見ていた。
「えっと、その」
起きたばっかりでうまく反応できない。
「取り敢えず、ほら、熱計ってみなさい」
弥久先輩は体温計を渡してくれた。
熱を測ってみれば38℃と表示されしっかり上がっていた。
「熱上がってるじゃない。だからあんまり動いちゃダメだって……」
「まったく、いきなり倒れるからこっちは心配したのだぞ」
「その節は申し訳なかったです」
「分かれば良いのよ。それで、親御さんはいつ帰ってくるの」
僕の親のことだろうか?弥久先輩はどうしてそのようなことを聞くのか気になる。
「何か関係あるんですか?」
「こんなに熱がある人を1人で家に置いておけないでしょ。帰ってくるまで私が一緒にいてあげようって言ってるの」
普段の先輩とはかけ離れた優しさに少し不信感を持つと共に動揺する。
「弥久先輩何か変な物でも食べましたか?」
「失礼ね、弱ってる人にきつく接したりしないわよ。大体私のことを何だと思ってるの」
普段の僕への当たりは強い弥久先輩だが、こう言う時はほんの少しだけ優しくなるのか。
割と面倒見の良い人なのかもしれない。
「もちろん私も一緒に待っているから安心して休むがいい」
皆越先輩も看病してくれるみたいだった。
風邪のせいで少し心細くなっていたので、この気遣いは本当にありがたかった。
しかし、ふと思う。お決まり展開が好きな皆越先輩が、本当に何もしないのだろうかと。
寝込みを襲ったりをしないまでも、何かしらの悪戯を目論んでいたとしてもおかしくないのではなかろうかと。
僕が先輩に訝しげな視線を送っているとそれに気づいたようだ。
「なんだ泰君、その目は。流石に病人相手に何もしないよ。……、いや本当だって。私がそんな常識ないように見えるか?」
「割と常識はないように思っていたのですが。そうですね、流石にそれはないですよね。今回はそれを信じることにします」
少し先輩の視線が泳いでいるような気もするが、熱もあるので気のせいなのかもしれない。
いや、そうだと思いたい。
このまま疑っていてもどうしようもないし、何より体がそれを許してくれなかった。
熱がある時特有の倦怠感に身を任せ、気づけば眠りに落ちていた。
しばらく経って目を覚ませば、辺りはすでに真っ暗になっていた。
下の階からは晩ご飯の良い匂いが漂って来た。
先輩2人がいないとこを見るに、親が帰って来たので帰ったのだろう。
体をベッドから起こし、下に降りていった。
「あら泰起きたの。体調はどう?」
リビングに入るとそこには、母と父、そして妹が居た。
「うん、もう大丈夫」
「ならよかったわ。それにしても泰の周りにあんな可愛いい女の子がいたなんてね。で、どっちが彼女なの」
母親というものは、どうしてそういう方向に話を持って行きたがるのだろうか?
はっきり言って普通にうざかった。
だからといって、高校生には珍しく反抗期でもないのでその気持ちをぶつけたりはしないが。
「はぁ。あのね、2人とも普通に部活の先輩だから。それ以上でも以下でもないの」
「えーでも、私の見立てによると、どちらかは泰に気があると思うのよ」
何の見立てなのか論理立てて説明してほしい。
「そんなんじゃないから……。それに先輩も自分のせいで風邪ひかせたと思ってるからせめてもの償いにとお見舞いに来たんだよ」
「そうだったとしても、なんとも思ってない人に対してお見舞いになんて行かないと思うけど」
「あぁーーもうわかったから。食欲はまだないからもう一眠りするね」
「お大事にね」
2階へ上がろうと思って何か先輩からもらっていたのを思い出す。
冷蔵庫を開けると、セリーが入っていた。
それを食べて、また寝ることにした。
翌朝は昨日の熱が嘘のようにすっきり目覚めた。
体温計で熱を測ってみても、平熱だったので今日は学校に行けそうだった。




