29話 お見舞いに行っちゃダメですか?
風邪を引いてしまった。
神社に1人残されて、雨も降り止みそうになかったので仕方なく濡れながら帰ったのが昨日。
しかしそれが祟ったようで、次の日である今日熱を出してしまったのだ。
いくら最近暖かくなって来たと言っても、流石に雨に打たれるのは不味かったみたいだ。
あれからお風呂に入って暖かくして寝たのだがダメだった。
先輩達とあんな感じで別れてしまったので僕が風邪を引いたと聞いて自分を責めなければ良いのだが。
あの状況では雨が止むのを待っていても何時までも帰ることができなかっただろうから、しかたの無いことだったと思っている。
ましてや、3人で傘に入るというのなんて論外だろう。
2人でも狭い折り畳み傘で、3人なんて入れるはずもない。
しばらく、学校を休んだこともなかったのでベッドでじっとしているというのも落ち着かない。
大体、行かないと連絡した途端に熱が下がってきつくも無いのに休まないといけないのは退屈だ。
仕方がないので2度寝することにした。
カラスの鳴く声が聞こえる。
外を見てみれば、空は茜色に染まっていた。
結構寝ていたみたいだ。
いくら平気だと思っていても、病人には違いない。
気付いてなくとも体は疲れていたのだろう。
「ピーンポーン」
玄関のチャイムが鳴らされた。
郵便物だろうかとベッドから降り、階段を下る。
ずっと寝ていたせいか、はたまたまだ体調が万全ではないのか体が重かった。
鍵を開けて、扉を開く。
「体調大丈夫?」
そこに立っていたのは文芸部の先輩2人だった。
真っ先に心配してくれたのは弥久先輩だ。
「ええ、何とか。今は熱も下がって、楽になりました」
「良かったよ。それとこれ、ポカリとゼリー持ってきたぞ」
コンビニの袋を渡してくれる皆越先輩。
ありがたく頂戴しておく。
病人が家に招き入れるのもどうかと思うが、玄関に立たせておくわけにもいかない。
「とりあえず中にどうぞ」
招き入れることにした。幸か不幸か今は親もいない。
妹もいるが、今は部活で帰ってくるにはもう少し時間がいるだろう。
自分の部屋は狭いので、2人をリビングに通す。
「せっかく弱ってかわいい泰君を見れると思ったのに。残念だな(笑)」
「健康だったことを喜んでくださいよ」
「冗談だ。でも本当に良かった。私のせいで風を引かせてしまったようなものだからな」
なんだかんだ心配してくれる皆越先輩。
さっきのも先輩なりに僕を元気づけようとしてくれたのだろう。
「あ、すみませんお茶も出してなくて」
せっかく来てくれたというのに、お茶も出さないのは失礼だろうと思い座っていた椅子から腰を浮かす。
すると先輩2人も立ち上がった。
「いや大丈夫だ」
「そうよ。ほら泰は座ってなさい」
先輩はそういうが、そういうわけにもいかないだろう。
僕は台所まで行くと、お茶葉の入っている棚に手を伸ばす。
「(あれおかしいな)」
なんだか景色がゆがみ、そして傾いていく。
2人が僕の名前を叫んでいるのが分かる。
それを聞きながら僕は意識を手放した。




