28話 責任感じちゃダメですか?
皆越 ゆかり
雨が降った次の日、泰くんは部活に来なかった。
先生に聞いたところ、どうやら風邪を引いて学校を休んだみたいだった。
十中八九、昨日雨に打たれたのが原因だろう。
申し訳ないことをしてしまったと思う。
部の長という立場で在りながら、守るべき部員をちょっとした悪ふざけで害を与えてしまったのだ。
流石に悠々と本を読んでいる気分にはなれなかった。
「今日は、これで活動を終わりにするか」
もう1人の部員である弥久に問いかける。
「そうね。私も今日はちょっとやりたい事ができたし、かまわないわよ」
何をしようとしているかはわからないが、受入れてくれるのはありがたかった。
「という事だから、私は帰らせてもらう」
さっきまで開いていても全く読み進めていなかった本を閉じる。それと同時に立ち上がった。
別に、急いで出て欲しいわけではなかったのだが、弥久も立ち上がる。
弥久に関しては特に私物を広げていたわけではないのでせいぜい、読んでいた本を片付けるくらいなのだが。
窓の鍵がかかっていることを確認して部室を出る。
ドアの鍵をかけるのには少しコツがいるのだが、これだけ毎日やっていると慣れたもので手間取ることはない。
鍵を職員室に返しに行くのに弥久はついてきた。
少し前まではこういうことも多かったと思うが、今ではその頃が久しく思える。
彼、雪本泰が来て環境が変わったという事だろう。
「こういうのも久しぶりね」
弥久も同じことを考えていたようだった。
「そうだな、そういえば昨日のことなんだが」
私は一旦立ち止まり、弥久の方に向き直る。
「何?」
彼女は返事をすると同じように立ち止まり、此方を見て小首を傾げていた。
私は昨日思った疑問をぶつけてみた。
「弥久があの話をするなんて意外だったなと思ってな」
「そう?」
「そうだろう。私にだって話してくれたのは知り合って結構経ってからだったじゃないか」
「そうかもね。私もなんで話したのかは分からないや」
淡々と話す弥久。嘘を言っている風でもないし、その理由も無いだろう。
「私は弥久が泰君のことを嫌っていたと思っていたんだがな。もしかして結構気にっているのか?」
「べっ、別にあんなやつ好きじゃないし!」
明らかに動揺した様子の弥久。
「私は気にっているか聞いただけで、好きかどうかは聞いていなかったのだが。そうか……」
「いや違うから。気に入っているだけだから。勘違いしないで」
「弥久、それをなんと言うか君なら知っているだろう?」
私のツッコミに顔を赤くする弥久。
「ツンデレなんかじゃないんだからーー!!」
「まあその話は置いといて、泰くんには好きな人がいるらしいな」
「え!?そうなの」
途端に、期待と不安の入り混じった顔をする。
それはまるで恋する乙女のようだ。
「ああ、相談されたんだよ」
「へーそうなんだ」
必死で興味の無いフリをしているが、全く隠せていない。
「まあ、泰君が好きな人が弥久だったらいいなー(笑)」
そうやって揶揄いながら、職員室へ入っていった。
「それで、なんでいるの?」
あれから学校を出た私と弥久だったが、家の方向は真反対側なはずなのについてくる私に対しての問いかけだった。
「そんなの、こっちに用事があるからに決まっているだろう」
正直に答えておいた。
「用事って……もしかして泰のお見舞い?私住所教えないからね」
流石に長い付き合いになると考える事がわかるらしい。
「大丈夫だ。もうすでに先生から聞いてある」
「まったく……」
呆れた表情をする弥久。
「これでも責任を感じているんだ。お見舞いくらい行かせてくれ」
「私も人の事言えないか。お詫びしないといけないと思って泰の家に行っている訳だし」
「せめてもの償いに何か買って行くか」
「そうね。スポーツドリンクとかゼリーとかが良いかな?」
「良いと思うぞ」
私たちは最寄りのコンビニでそれら2つを調達してから泰君の家へ、一緒に向かった。




