27話 昔話をしたらダメですか?
「パパが死んでから何処にいても何をしていても寂しかった。もちろん周りの人はそんな私に優しくしてくれたから少しはましだった。でも腫れ物に触るように扱われるのは、辛かった。当時はゆかりとも知り合っていなかったし、頼れる人なんかもいなかったから」
何か辛いことがあった時、信頼できる人がそばにいるだけで心強いものだ。
しかし、近くに居てくれる人がいないという辛さは相当なものだったのだろう。
状況次第では、来世に期待するという選択肢を取る人も少なく無いだろう。
「そんな時、此処の神社にたどり着いたの。当時は、家にいるのがあまり好きじゃ無くてね。外を散歩している時にちょうど見つけて。こうして階段に座っていると誰かに包まれているようで落ち着くの」
神社だから弥久先輩の父親の霊という訳でも無いだろう。
ただ日本には八百万の神がいると言われているから、そんな優しい神様がいても良いのでは無いだろうか?
「そうやって私は救われたの。今ここに入れるのもこの神社の、うんん、此処の神様のおかげなのかもね。だから私はこの場所が好きなの」
思い出の場所と言うものは良いものだと感じる。
物や人の気持ちと言うものは簡単に壊れてしまったり形を変えてしまったりする。
しかし、場所というのはそこの建物が無くなってしまうことはあっても、その場自体が無くなってしまうことはないからだ。
人は変わっていく生き物だが、それ故に変わらないものに安心感を抱くのだろう。
「さて、話もひと段落したみたいだしそろそろ帰るとするか」
皆越先輩が平然と言うが、さっきから雨は一向に弱まってはいなかった。
むしろ強くなっている気さえする。
「まだ雨降ってますよ」
「そうだな。まあ、駅くらいまでなら大丈夫だろう」
皆越先輩は冗談を言っているという雰囲気では無い。
もう一度空を確認してみるがやはり、いくら近くに駅があるとはいえ流石に躊躇われるくらいの雨が降っている。
「いやダメだと思うんですけど……」
「弥久そろそろ行こうか」
僕を無視して弥久先輩に声をかける皆越先輩。
さらに何かカバンを漁っているようだった。
そして取り出したのは、なんと折り畳み傘だ。
「傘持ってたんですね」
「そうだな。弥久も早く入れ。行くぞ?」
これはもしかして僕は置いていかれる流れなのだろうか?
出逢ってそこまで経ったわけでは無いが、ここまで素っ気ない扱いをされるとなんだかもやもやする。
「僕はどうすれば……」
「なんだ泰君いたのか。悪いなこの傘2人用なんだ」
「何青い狸のアニメみたいなこと言ってるんですか?大体、傘はいつの時代も1人用ですよ!」
先輩のことを誤解していた。素っ気ない扱いをしていたのでは無く、ただただこれがやりたかっただけだろう。
その根拠として、顔がめっちゃニヤニヤしている。
「女の子にモテない泰くんのために教えてやるが、傘とは本来2人まで入れるようにできているのだよ。まあ、泰君には関係ないと思うがな」
なんだかイラッときてしまう。
皆越先輩は僕の表情を見て「おう怖い怖い」と言うと2人で雨の中へ消えていった。
取り残された僕は、濡れるのも厭わず暗い空を見上げる。
「まだ雨、止みそうに無いよな……」
悲しみの雨に打たれ帰った僕は、翌日風邪を引き学校を休むことを余儀なくされた。




