24話 取材に行っちゃダメですか?
あれから家に帰って原稿用紙に向かったのは良いものの、いざ書くとなるとシャーペンは動かなかった。
さっきまでは神々をモチーフにした壮大なストーリが浮かんでいたはずなのだが、実際に言葉にしてみると途端にチープなものに成り下がってしまう。
あるいはもともと価値など米粒程度なものでただ単純に脳内美化されていただけなのかもしれないが。
小説は普段からかなりの量を読んでいる自信がある。
しかし、読むのと書くのは大違いで全く別の技能が要求されることを痛感する。
結局意気込んで帰った割には
もとい、意気込んで帰ったにも係わらず原稿用紙は消しゴムで消した後だけが残っていた。
「それで、結局どこまで進んだのか知りたいな」
時は変わって文芸部、部室。
当然と言えば当然。皆越先輩は進捗を聞いてきた。
「そのことなんですが……」
1枚目だけ薄汚れた原稿用紙、数十枚を机の上に遠慮がちに置く。
「これは?」
皆越先輩がそのように尋ねるのも頷ける。
あれだけ昨日意気揚々と帰れば、誰でも期待を持つのが自然だろう。
「昨日ここを出るときは良い物語が書けそうと思っていたのですが、実際書いてみるとうまく表現できなくて」
「なるほど。でもどうしたものだろうか」
僕が行き詰っていることに関して眉間にしわまで寄せて真剣に考えてくれる先輩。
僕のことを考えてくれていると思うとなんだか幸福感に包まれる。
2人で悩んでいるときに、弥久先輩が割って入ってくる。
「頭の中で考えるだけじゃなくて、実際に見てみたらわかることがあるんじゃない?」
「それなら幾分か書きやすそうですね」
想像で補えない部分を自分の目で見るというのも良い解決策だと思った。
「でも、神様なんてどこで見るんだ?さすがにそれは厳しいと思うが」
「あ、そうですね」
皆越先輩の現実的な指摘により弥久先輩の意見は否定されたに見えた。
「いや違うから。その、なんていうの?神社とかあるでしょ。神様が見えなかったとしても、その場所に何があるかとか雰囲気とかが掴めると思うの」
「確かに建物とかを見ておけば、想像で補えなかった部分などが見えてきて描写するときに役に立ちそうだな」
「私、ここの近くで良いとこ知ってるのよ」
「なら、明日にでもそこに行ってみるか。泰君もそれでいいか?」
僕は拒否する理由もない(むしろ歓迎するくらいだ)ので同意しておいた。




