211話 バレンタインじゃダメですか?
2月14日。
なにか心当たりがあってもなくてもソワソワしてしまうのが男の性というものだろう。
斯くいう僕もなんだか落ち着かないのは同じだ。
面倒事が待ち受けていそうだと感じながらも、どうしても胸のあたりがふわふわしてしまう。
そんな浮ついた気持ちのまま校門を潜り、下駄箱につく。
淡い期待をいだきながら、ロッカーを開けるが入っているのは当然ながらの僕の靴だけ。
「何を期待してるんだか……」
自分自身の行動に呆れてしまう僕が居る。
冷静に考えて見よう。
例えば、ロッカーを開けたらそこにはチョコが入っている。
当然それは、見知らぬ誰かが入れたもの。
名前くらい書いてあるかも知れないが、だとしても知り合いならもっと別の方法を取ると思う。
直接渡したほうが、何のとは言わないが効果は遥かに高いだろう。
変わって、見知らぬ誰かのチョコが、間接的に渡される場合を考えてみる。
うん、それはそれで嬉しいな。
心がぴょんぴょんする。
いかん、何も言い訳になっていなかった。
つまるところ、僕たち男は馬鹿なのである。
そして、例えロッカーにチョコが入っていなくても悔しくなんかない。
どさどさ、という音が聞こえそっちを見ると流れ落ちるチョコ。
視線を上に移しそいつの顔を確認するれば、イケメンだった。
爆ぜれば良いのに。
「泰何見てんの?」
いかにもギャルっぽい声が耳元で話しかけてくる。
加藤だった。
赤いマフラーはつけているものの、短いスカートの下は生足で膝や耳、鼻など赤くして、白い息を吐く。
「そんな寒そうだと風邪引くだろ……」
うっかりとつぶやいてしまった。
「心配してくれてるの?」
「見たままを言っただけ」
「でも今度から気をつける……」
彼女が嬉しそうに無邪気に笑う姿は可愛くないでもない。
「勝手にすれば」
加藤は、ぶっきらぼうな僕の答えにも嬉しそうに「うん」と返事する。
教室が同じなので、必然的に一緒に歩くことになる。
一緒に歩くのが嫌ではあるが、わざわざ離れるほどでもない。
むしろ、そういう手間を掛けないといけないということのほうが癪だ。
なにかゴソゴソとしている気配を察して、加藤の方を向く。
彼女が取り出したのは、小さな赤い箱だった。
「はい、これあげる」
加藤が、取り出したそれを渡してくる。
「いらん」
僕は彼女の方を向かずに返事をした。
そして、異変に気づいて加藤の方を見ると彼女は数歩後ろで立ち止まって涙を浮かべていた。
これだったら、僕が悪いみたい……じゃなくて実際に悪いのは僕か。
「ありがとな」
僕は少し恥ずかしかったのもあって強引に奪い取る。
加藤は、僕が受け取ったことだけで嬉しかったみたいで、満足そうにしていた。
後から中を見たが、型にはめて固めたチョコだった。
ただ溶かしただけではなく、オリジナルにブレンドされていたようで絶妙な風味が美味しかった。




