209話 トリフじゃダメですか?
「それで何を作るの?」
材料を食品売り場で揃え、後日作る約束をして解散した。
今は、私の家のキッチンで材料を前にしている状況だ。
「トリフ作ってみようと思う」
「ふーん、難しくないの?」
「さあ?」
トリフの作り方なんて知らなかったので難易度なんてわからない。
「へ?」
しかし真由美からは変な顔をされてしまった。
「まあ、なんとかなるでしょ」
私は、スマホで「トリフ 簡単」で検索を掛ける。
その中から良さげなサイトを開いた。
「これでいいや」
「本当にそれで大丈夫?」
普段私をからかって面白がるくせに、意外と心配もしてくれる。
でも、問題ない。
「大丈夫、大丈夫。だって、簡単って書いてあるから」
「まあ、いいや」
納得できてないみたいだったが、一応納得してくれた。
「まずは……ボールにミルクチョコを割って入れるのね」
必要な道具は出してある。
「これってさ」
「???」
「ボールに入れて砕いたほうが楽だよね」
「まあ、そうかも」
私は板チョコをボールに入れて拳を作る。
「⁉ちょっとまって」
「何?」
せっかく振り上げた拳を一旦下ろす。
「いや、それバレンタインチョコだよね。呪いでも込めてる?」
呪い?そんな訳ないでしょ。
「だから何の話ししてるの?」
「もういいや……続けて」
続けろと言われたので次の工程に移る。
次は……鍋に生クリームを入れて、
「生クリームって生乳とどう違うんだろう」
「せいにゅうって読むんだよそれ……」
「え⁉」
いいや違うはず。
私は本棚の下の方から広辞苑を取り出し辞書を引く。
「ほらここ」
私は、なまちちのところを指をさす。
「確かに……でもわざわざそこを読まないよね」
別にいいじゃん!
私は恥ずかしさを隠すためにも無視して作業を進める。
生乳を入れたら弱火で沸騰直前まで温めて、さっきのチョコと混ぜるのか。
その後はクリーム状になるまでかき混ぜる、か。
私はかき混ぜてかき混ぜてかき混ぜる。
チョコは割と早い段階で溶けたのだが、どれだけ混ぜてもなかなか泡立てることができない。
混ぜ方が足りないのかと思って更に力いっぱい混ぜてみた。
「あのさ、弥久」
真由美の方を見てみれば、顔にチョコが飛んでいた。
「あ、ごめん」
「クリーム状だから、別にホイップクリームみたいにする必要はないよ」
「…………」
さて次はラップをして冷蔵庫に30分放置ね……
「聞いてる?」
余ったやつは今のうちに食べちゃおっと。
「聞いてる?」
コーヒーも入れよっと。
「ねえ、聞いてる?」
「聞いてます……」
30分立って、冷蔵庫からボールを取り出す。
「後は掬って1口サイズに丸めるのか」
スプーンを取ろうとして、出し忘れていたことに気づく。
「これ?」
真由美が気を利かせて渡してくれた。
お玉を……
「うん、真由美はいっぱい食べる元気な子だから1口が大きいんだもんね」
「本気で言ったんじゃないよ!」
「わかってるから、大丈夫」
「絶対わかってないでしょ⁉ねえ、聞いて!!」
真由美がなにか言っていた気がするが、彼女のことはわかってるから大丈夫だろう。
最後に、適当に真由美の話を聞き流しながらバットに並べたチョコにココアパウダーをまぶす。
「出来た……」
「まさかできるとは思わなかったよ」
真由美は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。
「失礼な。失敗する要素なんてなかったでしょ」
「失敗する要素だらけだったよ!」
そうかな。
私はいくつかお皿に盛り付け、真由美に渡す。
「はい」
「私に?」
「そうよ。ほら、恩着せがましかったけど付き合ってくれたわけだし」
私は少し照れながら言う。
「なんか余計な言葉が混じってたけど、ありがと」
真由美は1つ口に放り込むと美味しそうに食べてくれた。
「頑張ってね……」
「うん……」
最後にチョコを箱に詰めて小綺麗にラッピングして当日に備えた。
きっとうまくいく……よね?




