20話 観覧車に乗っちゃダメですか?
フードコートでは、各々が好きなものを注文して昼食をとった。
食事が済むと今度は近くのアトラクションから順に遊んで行った。
さすがにもう絶叫系のアトラクションは乗らなかったがその他はあらかたコンプリートした。
やがて、辺りは薄暗くなり初めイルミネーションのLEDが瞬きだした。
「そろそろ帰るか」
あまり遅くなるのは良くないと思い提案してみる。
僕は兎も角、エドに関しては家の門限が結構厳しそうだと感じたからだ。
「そうですね。ここの乗り物もほとんど乗ってしまいましたし。では最後にあれ乗りませんか」
エドが指をさしたのは夜空で星のように輝く観覧車だった。
「そういえば、遊園地の目玉でもある観覧車には乗ってなかったな」
「本当にそうですよ。観覧車に乗らずには帰れません」
遊園地の締めとして観覧車は最も適切だと思う。
近づいて見てみると先ほどとは違い意外に大きく見えた。
並んでいたのは2、3組だったのでそれほど待たずとも直ぐに順番が回ってきた。
「私たちの番ですね」
楽しそうに先に乗り込むエド。
僕も後に続いた。
ゆっくりと上昇していくゴンドラ。
だんだんと景色が小さくなっていく。
「泰君。貴方はゆかりのことどう思っていますか」
4分の1回転くらいのところでエドは問いかけてきた。
「どういう意味?」
その意図を読み取れず聞き返す。
「そのままの意味ですよ。泰君はゆかりに少なからずに好意を寄せているように見えたのですが」
ドキリとした。この話はあまりしたくない。
もう自分の中では答えは出したはずだ。
「……」
でもなぜだろうか、そのような思いが無いとエドに伝えることはできない。
「私は、貴方にならゆかりを盗られても構わないと思っています。貴方のことを話しているゆかりはいつも楽しそうに笑っています。嫉妬してしまうほどに」
皆越先輩の顔を思い浮かべる。彼女のことを考えるだけで、心臓の動きが速くなるのを感じる。
僕はまだあきらめきれてなかったのかもしれない。
「僕は……」
考えがまとまってなく、言葉が続かない。
そんな僕を、エドは黙って待っていてくれた。
「まだ皆越先輩のことが好きみたいです」
言葉に出すとなんだか恥ずかしさを感じる。今鏡を見ればきっとびっくりするくらい真っ赤に顔を染めている事だろう。
「そうですか。ならば私も、ゆかりを貴方からとられないように頑張らなければいけませんね」
エドに恋愛で勝てるなんて思っていない。むしろ勝てる要素が見当たらないほどだ。
しかしだからと言って、挑まずにいられないのが恋というものなのだろう。
「そろそろ頂上ですね」
気が付けば今ゴンドラは天辺へ来ていた。
高いところから見ると季節外れのイルミネーションが小さく見える。
「きれいだな……」
「きれいですね……」
ここに次先輩と来れたら……
叶わない夢と知りながらそんな物思いにふける。
きっとこの景色を一緒に見るのは自分ではないだろう。
でも、もしかしたらと希望を持つくらいは許してもらえるだろうか。
気づけば、降りる地点はすぐそこまで来ていた。
やがて係員が扉のロックを解除する。
そして2人は、観覧車の扉の先へ歩き出した。




