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ライトノベルじゃダメですか?  作者: 東雲もなか
さよなら、さよなら
207/216

206話 言い出せなくちゃダメですか?

「それで、何を話してたんですか?」


 先生からの用事を済ませて部室に戻る時に話し声が聞こえていた。


 瑠璃は、僕が教室に向かっている途中で出てきて階段の方へ行ってしまった。


 トイレに行ったのかもしれないと思ったが、それだったらこの階にもあるので違うだろう。


「何って言われても……」


 言いよどむ弥久だったが、それほど気になっていたわけではないので、それ以上の追及はしない。


「……あ、の」


 先輩は、それでも何か言いたげな声を上げていたが、先に続く言葉はなかなか出てこなかった。


 口を開いて「あぅ……」とただ息を吐くの繰り返しをしていた。


 僕はそんな彼女を無視しして、本を開いていた。


 こんな光景に酷いと僕を非難しないでほしい。


 元はと言えば弥久先輩があんな風にしなければよかったのだ。


 結局、弥久先輩は何も言えないまま時間だけが過ぎていったのだ。



 突如として部室の扉がけ破られる。


 引き戸なので、相当な力で蹴らないと外れない。


 それを証明するかのように開いた時の音もすさまじいものだった。


 レールから外れた扉が、僕の方へ倒れてくる。


 いきなり、しかも座っていた状態で反応できるわけもなく、僕は扉につぶされた。


「……って、誰だよ」


「先輩の意気地なし!!」


 入ってきた主、瑠璃は、僕の声を無視して弥久先輩の方へ叫ぶ。


「…………」


 瑠璃に叫ばれた当の本人はびくついたまま黙っていた。


「そんなんだったら、泰はもう私が連れていきますからね」


「まっ……」


 言いかけたのを瑠璃が視線で止める。


 それだけで先輩は、口を閉じて下を向いてしまった。



 帰り道。


「どっか行ってると思ったら。またどうせ聞き耳でも立ててたんだろ」


「いやぁ、そんな事無いですよ~」


 誤魔化す気すらないような適当な返事を返してくる瑠璃。


「まあいいや」


「許してくれるなんてやっぱり泰は優しいですね」


 許したわけじゃない。


「もう諦めてるんだよ……」


「そんな優しい優しい泰でも、弥久先輩にはイジワルなんですね」


「…………」


 瑠璃がこちらの顔をのぞき込んでいるのが横目で分かる。



「どうしてですか?」


 どうしてとは、なぜあれだけ弥久先輩のことを拒む続けるかを聞いているのだろう。


「どうしてって……」


 そんなの……


 瑠璃は軽くため息をつく。


「まあ、泰の気持ちもわからなくはないですが」


 そう言うと今度は空を見上げた。


 暗くなった曇り空には星すら見えない。


 その中彼女には何が見えているのだろうかというほど、じっと見つめていた。


「もう終わりにしないとですね」


 瑠璃はいつもからは想像できない大人びた表情を向けてくる。


 彼女の顔を見ていると、切なさを感じた。


「ああ……」


 吐いた息は白く、しかしすぐに消えてゆく。


 まるでこれからの僕たちを暗示しているように。

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