205話 少しお話しちゃダメですか?
「それで、弥久先輩の方こそどうするつもりなんですか?」
泰が部室から出ていった後、瑠璃が私に話しかけてきた。
「結局聞いてたのね……しかも最初から」
「悪かったとは思ってます。後悔はしてません」
まあ、聞かれてしまったのならしょうがない。
こんなところで話していた私にも落ち度があったのだ。
「あんな話が聞こえて来たので入るかどうか迷ってた私の気持ちにもなってほしいです」
「それで、迷った末入ってくる人の気持は一生わかりそうに無いわ」
「だってしょうがないじゃないですか。先生が泰呼んでたの伝えないといけなかったんですから」
瑠璃は唇を突き出してぶーぶー言っているが少しまってほしい。
「そうだったとしても、もっとタイミングがあるでしょ」
と言うか、先生が呼んでるって言うのは本当だったのか。
てっきり、泰を外に追い出すための口実だとばかり思ってた。
「そんなことはどうでも良いんです。結局先輩はどうしたいんですか?」
くだらない話は終わりだと、話を強制的に終了させてくる。
そして聞いてきたのは最初に戻って私のこと。
「それは……」
「それは?」
結局私はどうしたいのだろう。
その、泰と、えっと、色々と……したいのだろうか?
「わかんない……」
「はぁ……」
瑠璃はこんな私に呆れている。
「もう良いです。弥久先輩がズンダラブ−なのはわかりきったことですしね」
「え、なに?ズンダラブ−って?」
「これからどうするかを考えましょう」
「だから何なのズンダラブ−って?」
「うるさいですよ」
「はい……」
これって私が悪いのだろうか。
結局なぞの言葉はわからないまま。
それにしても、なんだかんだここまで付き合ってくれる瑠璃は優しいのだろう。
「私どうしたら良いと思う」
「いや、私に丸投げされましても」
それもそうだ。
私は、瑠璃の優しさに甘えすぎていた。
「まず、ゆっくり決めていきましょうか。初めに先輩は泰に振り向いて欲しいんですか、欲しく無いんですか?」
その2択だったら答えるのはそんなに難しくは無い。
「そりゃ、私を見てほしいに決まってるじゃん」
瑠璃はそれを聞いてにっこり笑う。
「なら、簡単なことじゃ無いですか」
「え?」
「先輩がそう言うなら答えは簡単です。泰に思いの丈を全てぶつけるべきです」
「でも……」
泰はゆかりのことが……
「でももだってもありません。だれがどう思おうが知ったこっちゃねぇんです。自己犠牲の精神はだれも報われませんよ。それもと先輩は敬虔なキリスト教徒でしたか?」
瑠璃の言っていることは一理あると思う。
だからといって、そんなふうに割り切ることができない。
「まったく……先輩は優しいんですね。あ、これは褒めてるわけじゃないですよ。まあ、私からあと言えることは、もっとワガママになって良いと思いますよ」
「瑠璃みたいに?」
「あはは、そうですね」
瑠璃は私が言ったことがおかしかったのか楽しそうに笑った。
「どうしようが、先輩の自由ですので後悔しないように。私は学年が同じですが先輩は違いますからね」
「瑠璃はさ……」
瑠璃は「はい?」と首をかしげる。
「自分のこともあるのになんでここまで?」
「あーそのことですか」
そんなこと聞かれるなんて思ってもいなかったような反応を見せる。
「知りたいですか?えっとですね……高校で付き合ってる人がどれだけそのまま結婚すると思いますか?つまりそういうことです」
なるほど、瑠璃は私は愚か、ゆかりはたまたその他の人でさえも敵として見ていないのだ。
「ゆっくりと私の毒牙に掛かればそれで……おっと、言い過ぎました」
瑠璃の悪戯な笑みは輝いて見える。
「そろそろ、泰も戻ってきますね。私は少しお手洗いに言ってきますね。ちょっとオナカノチョウシガワルカラジカンカカリソウダナー」
棒読みな瑠璃にはつい笑ってしまった。
瑠璃が出ていってすぐ泰は本当に戻ってきた。




