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ライトノベルじゃダメですか?  作者: 東雲もなか
始まりの文芸部
20/216

19話 楽しんじゃったらダメですか?

 向かった先はごく普通のどこの遊園地にもあるメリーゴーランドだ。



 温かみのある白熱電球に照らされながら、精悍な馬々が駆け巡る。


「メリーゴーランドだな」


「メリーゴーランドですね」



 メーリーゴーランドを眺める男子高校生2人。はたから見たらどのように見えているのだろうか。


 少なくとも、奇妙な光景であることには間違えない。



 しばらく一緒に眺めていると、突然エドが実況しだした。


「さあ、始まりました。第一回ねずみ賞。スタートしました」


「エド?」


「7番グレートコスモ、好スタートを切りました。ダブルオーシャンも、好スタートです」


「続くは、9番ブルーファイヤ3番手。それを追いかけるは6番クイーンレーサーです」


「最後尾にはスピードフラシュが追いかけます」


 エドはメリーゴーランドの馬を競馬に見立てて、実況を始めたみたいだった。



 それにしても、即興でこれができるのはかなりすごい気がする。目の前には手に汗握る白熱のレースが見えるようだ。


 それはさながら本物の競馬のようだった。


 まあ、本物の競馬なんて見たことないけど。



「戦況は一向に変わりません。圧倒的な力の差を見せつけて逃げ続けるグレートコスモ。速い!速い!」


「おっと、あれは何でしょうか? (そり)だー!!グレートコスモ橇を引いてます。これは他の馬への挑発なのでしょうか!橇を引いていながらも2番手のダブルオーシャンとの距離が一向に縮まる気配はありません。さすが王者の風格です」



「さて、いよいよレースも終盤このままの順位で決着がついてしまうのか!?」


「グレートコスモまだ伸びる伸びる。そしてそのまま1番手でゴールイン!!」



 そりゃ順位変わらないから1番グレートコスモになるよね。


「何で1頭だけ橇引いてるの。ばんえい競馬じゃないんだから」


「そんなこと言ったら、そもそも競馬じゃなくてアトラクションですけどね。まあ夢が詰まってるのは同じですけど」


「……。あの、メリーゴーランドの純粋な夢と競馬の欲望にまみれた夢、一緒にしないでくれますか?」



 そんな寸劇を繰り広げている間に順番が回ってきた。




「どれに乗りますか?」


 乗る馬を決めるのもメリーゴーランドの楽しみの1つだ。


「そうだな、まだ完全に体調が戻ったわけではないし……グレートコスモの橇にしよっかな」


「では、私もそこにしますね」



 エドは、先に橇に乗り込む。そうして僕に手を伸ばしてきた。


 体調が良くないと言った僕への配慮なのだろう。ありがたく差し出された手を取っておく。




 橇は向かい合わせに席がついている。


 なので必然的に見つめあうような感じになってしまう。



「なんだかお姉さま方の視線をそこはかとなく感じるんだけど……」


「気のせいだよ泰君」


「いやいや、絶対気のせいじゃないですよ。だって僕の正面の人明らかに進行方向とは逆の僕たちのことを、がっつり振り返ってみてますからね!」



「見てあの金髪の美青年。かっこいいわ。こっちを向いてくれないかしら」


「ほんと!でもあのもう片方の人誰なのかしら。かれし?」


「ないない(笑)だってあの顔だよ。ありえないって」


「だよねー(笑)」



 そう言った会話まで聞こえてくる始末だ。


 そもそも友達とかいう線はないのだろうか。いや、男2人でメリーゴーランドのそれもカップル席みたいなところに座ってるという奇妙な状況ではあるのだけれども。



「やっぱり私ブロンド君が受けだと思うわ」


「えー絶対攻めだって。ああいった弱そうなのが急に主導権を握るのがそそるじゃん」


「まゆみ全然わかってないよ。まあ、相手があんなにブサイクじゃ全然使えないけどね(笑)」



「(人がせっかくスルーしてたのに、もう一度はっきりとブサイクとか言うなよ!傷つくじゃないか!)」


 大体使うって何にだよ。あ、ナニに使うのか……



「エドも聞こえてるでしょ?」


「気のせいだよ。そんなことより僕を見てくれないかな?」


 その言葉とセットで、女子もイチコロな爽やかスマイルを向けてくる。


「いや、聞こえてますよね。聞こえてて彼女らに乗ってるでしょ。無駄なサービス精神見せなくていいですから」



 こっちのツッコミに楽しそうに笑うエド。


「(悪い気はしないかな……)」


 そんな思いを心の中でつぶやくくらいには僕に変化があったようだ。(言っておくと断じて変な意味ではない)



「なんだかよかったです。最初は泰君あまり仲良くしてくれないんじゃないかと思って」


「どうして、僕とそんなに仲良くしたかったんだ?」


「さあ?なんででしょう」


 その時タイミングが悪く、僕のお腹が「ぐ~」と間抜けな音を立てた。



 それを微笑ましく笑うエド。


「そろそろお昼にしましょうか」



 メリーゴーランドを下りた僕たちはフードコートへ向かった。

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