184話 加藤とお化け屋敷じゃダメですか?
僕は2番目の人と合流する。
実質的に言えば1目なのだが、そこを気にしていたら始まらない。
2と番号が書かれた棒を引いたのは加藤だった。
「それで、どこ行く?」
何も言わずにうつむいている加藤だったので僕から声を掛けた。
「うん、お化け屋敷とかどう?」
さっき行ったばっかりなんだけど……
「あ、いや、全然良いの。別のところで……」
僕は顔に気持ちが出てしまっていたようで、加藤が気を使ってくる。
「良いよ、お化け屋敷で。もう1回くらい行きたいと思ってたし」
別にそこまで楽しかったわけでもないので、もう1回行きたいと言えば嘘になるかもしれない。
だが、特別行きたくない理由があるわけでもない。
それに、1度入っているのでみっともなく驚くようなこともなく、クールに行けるだろうという考えもあった。
「やったっ」
加藤は小さくガッツポーズを見せる。
「そんなに、お化け屋敷が好きなのか?」
「うーん。えっとね、遊園地デートでのおすすめはお化け屋敷だって。あっ、違うから。別にでででデートとか、思ってないし」
思ってるんですね。デートって。
まあ、吊橋効果とかよく聞く話だ。
ていうか、僕に関してはどきどきしようが無いから一方的にどきどきされるだけのような気がしなくもない。
入り口まで来ると、さっきとは違い人がそこそこ並んでいた。
でも、少し待てば入れる程度なので問題はない。
「そう言えば、加藤は怖いのとか得意なのか」
「え?なんで?」
「いやだって、苦手だったら来たいとか言わないかなと思って」
「…………」
ん?
加藤の顔が真っ青になっていく。
血の気が引くって本当にあるんだなー
とかのんきなことを言ってる場合じゃない。
「大丈夫か?今からでもやめとこう」
僕は彼女の手を引いて列から離れようとする。
でも加藤は動こうとしない。
「歩けないのか?全く……ほら、おんぶしてやるから」
僕は、彼女の前にしゃがみ込む。
「……じょぶ」
「え?」
「大丈夫って言ってるの!」
そんなことを言われても、手足は恐怖からか震えていて、さっき触った時は冷たくなっていた。
とても大丈夫そうには見えない。
「意地はらなくていいから」
「ほら順番来たよ」
「え?あ、うん」
加藤は、入口の方に僕を押してくる。
突然だったので僕はそのまま入場してしまう。
まあ、本人が言ってるし、大丈夫なのか?
「ちょっと歩きにくい……」
「…………」
さっきから加藤は僕の腕というか体にしがみついている。
僕はそれを運ぶ形で歩いているのだが、そんなことだから一向に前に進まない。
隠せていないスピーカーから悲鳴が流れると加藤も共鳴するように叫ぶ。
そして、僕に抱きつく力がより一層つよまる。
「ほら、そこ出口だからもうでよ」
僕がそう言っても、加藤は勢いよく首を左右に振る。
「何で出たくないんだよ、怖いんだろ」
さっきから何度かそう提案しているのだが、首を縦に振ってくれない。
「怖いけど……」
加藤は僕の肩に顔を埋める。
「でも、くっつく正当な理由になる……」
「…………」
これあれだな、恐怖でおかしくなってるな。
加藤は普段そんなことをいう柄じゃない。
今の彼女はなんだか瑠璃を見ているようだ。
「ほら、良いから出るぞ」
もうこれ以上彼女が持たなさそうだったので、多少強引にでも連れ出す。
「まだ、全然大丈夫だったのに……」
「はいはい、強がりはせめて自分の足で立ってから言ってね」
加藤は腰が抜けてしまったようで僕にしがみついたまま。
まだ仕掛けのある地点を1箇所も通過していないのにこれだ。
このまま進んでいたらどうなったってたかしれたもんじゃない。
「ほら、ここに座ってろ」
僕は加藤をベンチにすわらせた。
「飲み物買ってくるけど、何が良い?……お茶か水にしとくか」
こういう状態でジューズとかも飲みにくいだろうし、控えておく。
僕が行こうとすると、呼び止められる。
「なんだよ」
「ここに居て……」
まだ怖いからと付け加えてきたので、流石に置いていけなくなる。
なので、僕も隣りに座った。
「あのさ、泰」
「今度は何だよ」
加藤は落ち着かなそうな様子。
顔を見てみると、血色は戻りさっきよりも良くなっているように見える。
「あたし、あんたのことが好きなんだけど」
「僕は嫌い」
思わず即答で答えてしまった。
「結構覚悟決めて言ったのにな」
「そんな事言われても、だいたい印象がな」
印象?
確かに第一印象は最悪だった。
友達?恋人では流石にないな。知人の瑠璃を馬鹿にしてたのだ。
これで好印象を持てるわけが無い。
でも、最近は助けられることも多かった気がする。
もちろんそれで許せるわけでもないのだが。
「訂正するよ、それほど嫌いでもない」
「ならっ」
「でも、好きかと言われればそうでも無いかな」
「…………」
加藤は僕の言葉で一瞬笑顔になるも、すぐ顔を伏せる。
「それでもいいや、見方を少しでも変えれただけで十分だから。あ、もう時間」
時計を見れば集合の5分前。
次の人がもう待ってるかもしれない。
「ほら、まだ歩けないだろ」
僕はまた、加藤の前でしゃがむ。
「うん。ありがと……」
僕は彼女をおぶって、集合場所までもどった。




