178話 無理をしちゃダメですか?
鬼頭風香
ゆかりと泰が病室から出ていった。
仲直り、とは行かないまでも何とか割れていた溝を少しは近づけることができたと思う。
「全く世話の焼ける奴らだな」
ただそんな風に他人の心配をしている場合ではなかった。
視界が歪み、頭がクラクラする。
目が映す像は次第にノイズがかった白黒になっていった。
(やばいかもな……)
流石に危険を感じてナースコールに手をのばす。
しかし、うまく手が動かせずリモコンを弾いてしまう。
「あ……」
飛ばされたリモコンは地面に落ちた。
自由の利かない状態で取ることもできず、ただ眺めることしかできなかった。
そうしている間にも、意識はどんどん薄くなっていく。
耳をすませば、誰かが走ってくる音が聞こえる。
走ってくる音?
不思議に思っていると、その足音の主が扉を勢い良く開ける。
誰なのだろうと思うよりも早く、
「病院で何さわいどんじゃい!……って、あれ?鬼頭さん⁉」
入ってきたのは担当の看護師さん。
俺を見るなり、急いで駆けつけてくる。
「大丈夫ですか!」
まあ、見るからに大丈夫では無いのだがそういった意味では無いのだろう。
「あなた!」
看護師は何かに気づいたようで声を上げる。
でも、それは今はまだあとと判断したのか、それ以上何かをするでもなかった。
代わりに、急いで応援を呼ぶ。
そしてすぐに他の看護師や担当医が駆けつけてきた。
結果から言えば、これ以上は大事にならずに済んだ。
もう少し処置が遅れればあの世へフライアウェイだったそうだ。
「鬼頭さん、何で機器類を全部はずしてるんですか!」
1番最初に駆けつけてきた看護師が質問というより怒ってくる。
「いやーそれは……」
俺は泰に心配を掛けたくなかったから、全ての機器を外して、隠していた。
あれだけ、私は彼を追い詰めていたのだ。
今の線だらけな私を見ると、ダメージは大きいだろう。
「もう、何をしたいのか知りませんが、そんなことして良いと思ってるんですか?死にますよ」
「すみません」
とにかく、最近あったばっかりの泰だが、弟みたいな彼に心配を掛けるなんてできない。
それは意地だ。
どうせ、今無理したところで生きれる日にちなんて対して変わるわけでもない。
ならば、せめて弟の心に傷を残すことは絶対に防がないとな。




