176話 お見舞いじゃ駄目ですか?
もう1個の良い知らせ。
瑠璃は自分から言いだしたのに結局教えてくれなかった。
代わりに言われたのは、鬼頭さんの入院している病院に行けと言うことだった。
どうやら、彼女が僕を呼んだらしい。
そして今、僕は今日も学校を休んで病院に来ていた。
病室の前で、入っても良いのだろうかと悩む。
ここまで来ていて不甲斐ないやつだ。
何度かドアに手を掛けたが、毎回離してしまっていた。
「泰、そこにいるのだろ」
予期していなかったから、びっくりしてしまう。
別にやましいことをしているわけではないので、そんなに驚く必要は無いと思うのだが、やはり前のことがあったから心臓が跳ねた。
「失礼します」
分かられていながら、ためらって右往左往していることほど滑稽なことは無いので、僕は覚悟を決めて病室に入った。
中に入ると鬼頭さんはベッドに寝ていた。
沢山の管に繋がれているのを想像していたが、そんなのは一切なく、思ったよりは元気そうで安心した。
「全く、すりガラスからおどおどしているのが見えていたぞ。面白いやつだな」
僕はこちらがわからの僕の様子を想像して恥ずかしくなる。
「お願いです。さっきのことは忘れてください」
「無理だ。これは死後の世界まで持って行かせてもらう」
鬼頭さんは粋なジョークのつもりだったのかもしれないが、全く笑えない。
「あれ?笑いどころなのだが……」
「笑えるわけ無いでしょ!」
「あははは、少しは元気になったみたいだな。うん、その顔のほうが好きだ」
僕は病人にまで心配を掛けてしまっていたのか……
「それで、体調の方は……と聞くのもおかしな話ですけど」
「ああ?見てわからんのか?元気に決まってるだろう」
口ではそう言っているものの、ベッドから出ない辺りを見ると、そこまで元気では無いように見える。
「俺の心配は良いんだよ。そんなことより泰、最近大丈夫だったか?」
「えっと、はい……」
大丈夫かどうかは、怪しかったがそれを鬼頭さんに言って心配を掛けるわけにはいかない。
鬼頭さんはジト目になって、僕を見つめてくる。
「嘘だな。まあ、知ってるんだ。お前のことはあらゆる人から聞いているからな」
「知ってるなら聞かないでくださいよ。イジわるですね」
「怒るな、怒るな。それで、ゆかりとはどうしたい?」
そりゃ仲直りしたい。
でも彼女は、鬼頭さんが倒れるのを防げなかったことを怒っている。
「どうしたい?」
鬼頭さんはやけに答えを迫ってくる。
「そりゃまた一緒に部活して、馬鹿言い合って、笑いたいですよ!」
僕は病院だと言うことも忘れて叫んだ。
「だとよ」
「え?」
ベッドの下から出てきたのは皆越先輩。
「すまなかった。泰が悪くないと言うことは分かっていたんだ。だが、八つ当たりしてしまった。冷静になってひどいことをしてしまったことに気づいたんだ」
「そんな、悪いのはっ」
「はい!スト−ップ!そこでやめ。良いじゃないか、俺はちゃんと生きている。だろ?強いて言えば無理やり抜け出してきた俺が悪いんだがな。まあ、全然反省はしてないけど。ほらこれやるから、皆で行って来いよ」
鬼頭さんが渡してくれたのは、数枚の遊園地チケット。
「これは?」
「ああ、なんか付き合いでもらったんだがな。俺はいけない。また医者に怒られるし」
だから行って来いと、僕にチケットを押し付けてくる。
鬼頭さんが譲らないので、僕は仕方なくそれを受け取る。
「おっと、なんか瑠璃が、泰がサボってるって先生に言いつけてるらしいぞ」
スマホを見ながら言ってきた。
「あいつ……僕ちょっと誤解を時に言ってきますね。あ、またお見舞いに来ますから」
「おお、行って来い。ゆかりもしばらく学校行ってなかったんだろ。お前もちゃんと行ってこい」
「分かった」
病室を出ると、先輩も後ろからついてきた。
廊下を歩いていると、ちょうど看護師が鬼の形相で鬼頭さんの部屋に入っていったが、おそらくさっき騒いでいたのが原因だろう。
僕は後ろを向いて謝っておいた。




