174話 学校を休んじゃダメですか?
部活に誰も来なくなった翌日。
僕は憂鬱で学校に行く気が起きなかった。
あの暗い教室のことを思い出すだけで、吐き気がする。
皆越先輩や弥久先輩、瑠璃のことが頭に浮かぶと苦しくて息ができなくなった。
前の2人はともかくとして、どんな顔で瑠璃に合えば良いのかわからない。
瑠璃もきっと僕とはもう会いたくないのだろう。
僕よりも他の誰かを選んだのだ。
あんなに面倒くさく思っていたはずなのに、いざ離れてしまうと寂しくなる。
なんて自分勝手なのだろうと更に、気分は沈んでいく。
電話の鳴る音が聞こえた。
いつの間にか寝ていたらしい。
その方が、嫌な思いをしなくて済むので良かったのだが起こされてしまった。
時計を見てみれば、12時を回っていた。
そうやって状況確認が終わっても、着信はしつこく鳴り続いている。
スマホの画面を見てみると、池田麻衣子とでていた。
僕は睡眠を奪われた恨みを込めて電話を切るボタンを押した。
そしたら速攻でLINEが送られてくる。
[切ったってことは今スマホを手に持ってるのですよね]
[言い訳はできないですよ]
丁寧な文章だと言うのに、それからは圧力をじる。
これ以上無視を続けると次あったときに、何されるかわからない。
今は、まだあれだが、僕だってずっとこのまま家に引きこもっているわけにはいけないことくらい分かってるのだ。
その時に行きたくなくなる要素を増やしたくはない。
掛け直したほうが良いのかと考えているうちに、また電話がかかってきた。
今度は素直に出ておく。
「あ、やっとかかりましたね。言いたいことは色々とありますが、まあ、何があったか聞くのが先ですかね。だいたいのことはすでにしてますけど」
直ぐに先生の声が聞こえてくる。
僕はなんて返したら良いのかわからず黙ってしまった。
「大丈夫ですか?話せます?」
最初の声もそれほど強い印象はなかったのだが、今のは明らかに優しい声使いだった。
きっと心配してくれているのだろう。
これ以上迷惑を掛けるわけにもいかない。
「……はい、大丈夫です」
スピーカー越しに穏やかな笑みが透けて見えるような溜息が聞こえてきた。
「良かったです。まあ、大丈夫と言えることはそこまで深刻ではないのでしょう。少しは安心しました。それにしても心配したのですよ」
先生は少し怒ったような、それでいて茶化すような言い方だった。
「すみません」
こんな僕でも心配してくれる人がいるのだと思うと、少し救われた気がする。
明日は頑張って見ようと思える。
「謝る相手が違いますよ」
「え?」
「はぁ……全く」
この度の溜息は心底失望したと言うような感じだった。
「だから謝罪なら蒼井さんにしてください、と言ってるのです」
「瑠璃に?ですか」
言ってる意味がわからない。
そもそも、彼女は僕より他のことを取ったのだ。
謝る意味なんて……
「ああああ!もう、良いです!今そっちに彼女が向かってますので、後は直接彼女から聞いてください!」
先生は、言い捨てると電話を切った。
その光景をまるで見ていたかのように、家のチャイムが鳴る。
「宅配便……なわけないよな……」
僕はいやいやながら玄関へ向かった。




