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ライトノベルじゃダメですか?  作者: 東雲もなか
つかの間の日常
171/216

170話 居ちゃダメですか?

 気がついた時には目の前に救急車があった。


 さっきまで僕が何をしていたかわからない。


 わかるのは、最初に居た場所から移動しているという事実だけ。


「付添の方はあなたで大丈夫でしょうか?」


 尋ねられたのは僕なのだろうか。


 そういう気もするし、そうで無い気もする。


 僕はなんて答えたかわからないが、車内に案内されたところを見るとちゃんと答えられていたみたいだ。



 揺れる車の中。


 頭が真っ白になるというが、今の僕は周りの世界そのものが闇に包まれている。


 まぶたは確かに開いているはずなのに、何も見えない。



 救急車が目的地に着くと、慌ただしくベッドが運ばれていった。


 運ばれた先は手術室。


 中に運び込まれ、扉が閉められると弱々しく赤いランプが灯る。


 「ジー」という蛍光灯のノイズだけが聞こえる。


 その場で僕は何も考えることなく、ただぼーっとしていることしかできなかった。



「パチンッ」


 廊下に平手打ちの音がよく響く。


 後から来た頬の熱さで、ぶたれたのが自分だということがわかった。


 でも不思議と痛みは無い。


「君ってやつは……」


 静かな怒りが込められた声で言ったのは皆越先輩。


 ああ、怒っている先輩もかわいいな……


 病院かどこかが彼女に連絡を入れたのかもしれない。


 先輩の顔は真っ赤に血が行っており、体はわなわな震えている。


「すみませんでした、僕のせいで……」


「パチンッ」


 もう1度ビンタの音がした。


 さっきよりも1.5倍は大きな音を立てて。


「ぼk  」


「パチンッ」


 次は反対の頬。


 口の中に鉄の味が広がる。


 喋っていたので肉を噛んでしまった。


 もし今、鏡を見たならばひどく醜い顔をしていることだろう。



「君はいつまでいるつもりだ?」


 いつまで?


 そんなこと考えていなかった。


 否、考える余裕なんてなかった。


 僕が答えを探していると、4回目のビンタが飛んできた。


 同じところを3回叩かれて、ついに皮膚が破れた。


 生暖かいものが滴り落ちる。


「今日はk  」


 そう言いかけるも、最後まで言わせてもらえずぶたれる。


 僕は何も言わずにその場を立ち去った。



 病院の中を歩けば、周りの人が振り返って僕を見てくる。


 そりゃこんな明らかなけが人を見れば誰でもそうなるだろう。


「どうせならカッコいい顔をみてほしかったな。はは……」


「あなた、大丈夫ですか⁉」


 通りすがりの看護師さんが、驚きながらも心配してくる。


「大丈夫です」


 傷もそんなに深い訳では無い。


 そのうち塞がるだろう。


「そんなわけ無いでしょ!速くこっちに来なさい、手当します!」


 僕は腕を引っ張られ、強引に処置室に連れ込まれた。


 曲がりなりにも、患者なのに雑な扱いだった。



 包帯を顔にぐるぐるに巻かれたせいで、外の空気はそれほど冷たくなかった。


 多分歩いて家に帰ったのだと思うが、後のことは覚えていない。


 わかっていることは、翌日はちゃんとベッドで目を覚ましたということだけだった。


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