169話 プレゼント選びじゃダメですか?
「こんなのとかどうですかね」
僕はコスモスの髪飾りを手に取る。
「ふむ。なるほど、泰の好みはそんなのなのか」
「僕のこのみとかじゃなくて、先輩に似合うと思っただけですよ」
僕は少しムキになった口調で否定する。
「おう、そうだな。そういうことにしといてやろう」
「そういうことじゃなくて、そうなんですよ!」
鬼頭さんは笑いながら僕に詫びてくる。
そんなふうにされても許す気になれないのだが……
「まあ、確かに似合いそうではあるな。だが、俺はこっちの方が良いと思うんんだが」
そうやって見せてきたのは、パステルピンクのチュールスカート。
確かに可愛く、それを着た皆越先輩を見てみたい気持ちはある。
しかし、
「それはちょっと幼くないですか?先輩はもっと大人っぽいやつの方が似合うと思うんですけど」
鬼頭さんは僕の意見に全力で反論してきた。
「何を言っている。ゆかりはああ見えてこういうやつの方が似合うんだよ。それに昔からこういう服あいつは好きなんだ!」
僕は負けじとそれに対抗する。
「いいや、違います。ほら、こっちのシンプルなフレアスカートとかの方がきっと似合いますって」
僕は右手にあった、スカートを掴み取るとそう主張した。
「全くこれだからお子様は……落ち着いた雰囲気の子が、幼なさを感じる格好をするからそのギャップに萌えるんだろうが」
「それは、ただの鬼頭さんの好みでしょう。自分の性癖を他人に押し付けないでください。だいたいこれは皆越先輩の誕生日プレゼントを買いに来てるんですよ」
「そんなの分かってるよ。だが、こちらにも譲れないポリシーってもんがあるんだよ」
「知りませんよ。なら僕を呼ばないで1人で選べばよかったじゃないですか。だいたい、なんで人の選んだものに口出してるんですか。それぞれが似合うと思ったものをプレゼントすれば良い話でしょ」
「…………」
僕の息絶え絶えな主張を聞き突然大人しくなった鬼頭さん。
「どうしました、やっぱり皆越先輩には大人っぽいファッションの方が似合うって認めましたか?」
「あ、いや。そうじゃなくてな」
僕の攻撃的な口調とは真逆の穏やかというよりは間の抜けた答え方。
僕の言ったことをちゃんと聞いていたのかを疑うような、そんな声だった。
「ならどうしたって言うんですか?」
「俺たちなんで同じもの上げようとしてるんだ」
思えば確かにそうだ。
熱くなっていたせいでつい忘れていた。
「押し付けは良くないな。まあ、意見くらいにしておこう。そうだ、さっきの髪飾り似合うと思うぞ」
「え?あっと、ありがとうございます」
鬼頭さんはまたプレゼントを選び出していた。
僕も他にもっと良いものがないか探してみる。
認めたわけではないが、可愛い系のものについても一応目を向けてみる。
そして、これは!というものをやっと見つけた。
「鬼頭さん、見てください。これなんてどうですか!」
僕は鬼頭さんの元まで言ってその品を見せようとする。
しかし、彼女は後ろを向いたまま反応を示さない。
「鬼頭さん?」
僕はもう1度声をかけ、肩に手を乗せる。
そして、彼女はこちらを振り返るのではなくそのばに崩れ落ちた。
「鬼頭さん⁉︎」
目の前には、彼女が倒れている。
そういえば、彼女は重い病気で先が長くなかったことを思い出した。
身体中の汗管から滲み出る汗が痛い。
自分のせいでこんなことになってしまったのかと考えると、混乱してどうすれば良いのかわからなくなる。
「ま、まずは、きゅ救急車。番号は?」
スマホを取り出して電話をかけようとしたのだが、番号がわからない。
そしてその前に手の震えでスマホのロックが解除できない。
「お客様大丈夫ですか!」
僕が取り乱していると、様子を不審に思った店員が駆け寄ってくる。
店員は的確に情報を判断し行動に移す。
もちろんその内に緊急連絡も済ませていた。
僕はその間ただ見ていることしかできなかった。




