163話 ギャンブルじゃダメですか?
「楽して稼ぎたいです」
いつものように部室で小説を書いていた瑠璃が、突然そんなことを言ってきた。
「そんなのできたら誰でもやってるよ」
僕は半ば呆れ気味に答える。
「瑠璃、良い方法を教えてやろう」
そういったのは皆越先輩。
「なんですか!教えて下さい!」
瑠璃は興味津々に答える。
「世の中には、マーチンゲール法って言うのがあってだな」
あ、これは瑠璃に聞かせてはいけないたぐいの話だ……
「皆越先輩その話はそこでやめです。はいおしまい」
「え〜、気になるじゃないですかぁ」
「と言われてもなー、泰君がダメって言うし」
皆越先輩は今回はとどまってくれた。
しかし、
「マーチンゲール法っていうのはルーレットで必ず勝てる方法よ」
代わりに弥久先輩が余計なことを言う。
それに、言い方に悪意を感じる。
多分だが、先日のことをまだ根に持っている。
普段、仲が良かったのに最近あまり会話しているところ見てなかったし。
2人は、というより弥久先輩が一方的に敵意を向けている。
まあ、そこまで本気で怒っているとも思えないが。
「どうか、詳しく」
瑠璃は、さらなる説明を求めている。
「あのな瑠璃、それは理論的に必勝であっても現実ではそんな簡単な問題じゃないんだぞ」
「泰は黙っていてください!」
このアマ、人がせっかく助言してやっているのに。
「そうね、簡単な話よ。カジノのルーレットがあるでしょ。あれで色掛けして負けたらベットを倍にしてまた同じところに書けるのよ。そしたら、必ず勝てるわ」
「なんと、そんな裏技が⁉」
「瑠璃、本当にそんなこと簡単にできると思ってるか?考えてみろ、皆ルーレットで勝ってたらありとあらゆるカジノ店が潰れまくるだろ」
会話を遮られて不満そうな瑠璃だったが、少し考えて渋々認めた。
「大体の場合、最低と最高の掛け金が決まってるんだ。だから、マーチンゲール方を使うなら相当な資金、例えばウン千万規模で必要になってくる。例えそれが用意できたとしても連続で負けて、ベット額が上限まで来たら損をする。連続で外れるのは割と無い確率ではないしな。仮に、うまく言ったとしてもやりすぎたら出禁になるし。わかったか」
「全く泰は夢が無いですね。まあ良いです。私は泰のお嫁さんにしてもらうので養ってもらいます」
「勝手に決めるなよ」
「瑠璃それならブラックジャックならどうだ?」
「いや、瑠璃にカードカウンティングできると思いますか?」
普段の彼女を見てみろ。とてもできそうに見えない。
逆に、はめられて大金巻き上げられそうだ。
「泰君知らなかったのか?瑠璃ブラックジャック強いぞ」
「え?」
僕は予想だにしない言葉に思考が停止する。
「だって、瑠璃ですよ。え?本当に?」
「えっへん」
瑠璃は腕を組んで誇らしげにしている。
「信じられないんですけど……」
「なら実際にやってみたら良いだろ」
先輩は棚からトランプを出してくる。
「じゃあ私が親をやりますね」
ブラックジャックの親は必ず16以上の数字にしないといけないので不利になる。
当然知っていると思うので、完全に煽っているのだろう。
「か、勝てない……」
これで3回め。
その全てで僕は瑠璃に負けていた。
「ふふふ、私に勝とうなど100年早いですよ」
「くっ……」
僕は散らばったカードを集める。
「ん?」
「あ、」
僕がその時見つけたもの。
それはハートの4が2枚。
トランプにはジョーカーを除けば同種のカードは入っていない。
ならば何故こんなことが起こっているか。
答えは1つ。
「私はそろそろかえりますね」
瑠璃はそそくさと帰り支度を初めた。
「ちょっとまて」
瑠璃は僕の言葉にピクッと動きを止める。
「これはなに?」
「ギョウシャノミスデスカネ」
そう言い終えるやいなや全力で逃げ出す瑠璃。
「ちょ、おい!」
僕の呼び止めに応じることなく去っていった。
「な」
「何が、な、なんですか?あの手癖の悪さが瑠璃で良かったですよ」
たまたま見つけることができたが、それでもプレイ中は気づけなかった。
それだけの腕を持っているのだ。
まあ、瑠璃なら悪用したりしないだろうし、よかったのか?
良いんだよな?
僕はそのことはもう考えないようにした。




