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ライトノベルじゃダメですか?  作者: 東雲もなか
つかの間の日常
162/216

161話 コーラとポテチじゃダメですか?

「泰君飲み物でも買うからついてこいよ。荷物持ちとして」


 鬼頭さんが、僕を誘ってきた。


「それなら私が……」


 皆越先輩も立ち上がるが、それを鬼頭さんが手のひらで制止する。


「ゆかりちゃん、こういう時は男に良いとこ見せさせてあげないと。ね?」


 普段強気な先輩も、彼女に対してはそうでもないらしい。


 おとなしく元いた椅子に座り直す。


「それじゃ、行こっか。泰君」


 鬼頭さんは僕を待たずして、部屋を出ていった。




「うーん、どれにしようか……」


 現在は、病院内のコンビニで飲み物を選んでいた。


 鬼頭さんはコーヒー牛乳かいちご牛乳どっちにするか悩んでいるようだ。


「それで、まさか本当にジュース買いに来たってだけじゃないですよね?」


「泰君は漫画の読みすぎじゃ無いかな……どっちも捨てがたいな、ここは間をとってコーラにしよう」


 そこを突かれると否定はできない。


 あと、


「どう間を取れば、その選択になるんですか!」


「全く細かいことは良いじゃないか。コーラ買ったからついでにポテチも買っていこう、そうしよう。泰君はいらないの?おごるけど。ゆかりちゃんは、この醤油味のメロンソーダでいっか」


 醤油味のメロンソーダってそれはもはやメロンソーダじゃない気がする。


「じゃあ僕は缶コーヒーで」


 このままだと僕まで変なものを選ばれそうだったので、無難なものをかごに入れておいた。


 それを見ると鬼頭さんはレジへ向かう。


「あの、本当に奢ってもらってよかったんですか。その、何というか、病人に頼るのは……」


「あぁ?今更何いってんだ。だいたい俺はミリオン作家だぞ、小僧ごときに奢るなど造作も無いわ」


 そうとまで言うので素直に甘えておいた。



 帰り道。


「そういえば、そんな体に悪いもの食べて大丈夫だったんですか?寿命縮みますよ」


 最後のは冗談で言ったつもりだったが、やはりこれは不味かった。


「それもそうだな……」


「あ、いえ、そういうつもりでは。すみません……」


「何、気にすること無いさ。事実だ。俺は3ヶ月後に死ぬ。あ?いや、もう3ヶ月なかったっけな」


「どういうことですか?」


 言ってから気づく。


 初対面の僕にそれを聞く資格なんて無いことに。


 僕はうつむいて黙ることしかできなかった。



 歩いている途中にあるソファーに鬼頭さんが腰掛ける。


 そして僕の持っているレジ袋から自分の買った500ml缶のコーラを取り出すとプルタブを切った。


 そして缶コーヒーも取り出すと僕に渡してくる。


「ほら、お前も隣に座れ」


 僕はそれに従い、腰を下ろす。


「お前を呼んだのは、別に会いたかったからという訳では無い。いや、会いたかったこと事態は偽りなき事実なんだがな」


 鬼頭さんは照れ笑いを見せる。


 普段とのギャップも相まってかわいい。


「だが、それが本題じゃない。話はズレるが、お前ゆかりにかなり気に入られているみたいだな。面会に来た時いつも楽しそうにお前のことを話しているぞ。焼いちゃいそうなくらいにな」


 彼女は苦笑いを浮かべて言う。


「そう、ですかね?」


「気づいてなかったのか?恋は盲目というが……いや、この使い方はおかしいか。まあ、なんにせよ、当の本人が1番気づきにくいものなのかもしれないな」


 例えそうだったとしても、後輩を可愛がるようなもので、僕の感情とは似て異なるものだ。


「そんな思いつめた顔するなよ。頼み事し難くなるじゃないか」


 鬼頭さんは優しく笑い僕の頭をワシャワシャと撫でてくる。


「お前の気持ちもわからんでもない」



 少しの間を置いて鬼頭さんは口を開いた。


「お前に、俺が居なくなったあとのゆかりを頼みたくてな」


 彼女は、真剣な顔で言う。


 そこから彼女の本気が伺えた。


 嘘偽りなき本心であることを。


「無理ですよ……」


 僕のこれは間違えなく逃げだ。


 鬼頭さんの真剣な願いから僕は遠ざかった。



「ゆかりは普段強がっているが、本質は可弱き女の子だ。」


 彼女はそう言うと空を見上げる。


 と言っても病院内なのだから見ているのはせいぜい蛍光灯くらい。


 でもその目は間違いなくここではない、遠くの空を見ていた。


「もちろん私も弱い。見ての通りな」


 彼女は細くなった嫌に白い腕を(くう)に掲げる。


 まるでそこにある何かを掴むように。


「本当は私がずっと一緒にいてやりたがったが、無理そうなんでな」


「僕に、できますか?」


「さあな、わからん。第一私ができなかったことだしな」


 あっけらかんと言う。


 僕が欲しかった解答はくれなかった。


「別に気負う必要は無いよ。なんならこれまで通りで良い」


「……わかりました」


 ここまで言われて僕は断ることなんてできなかった。


「良い子だ!」


 鬼頭さんは僕を抱きしめてくる。


 振りほどこうとするが、本当に病人かと言いたくなるくらい力が強い。


 諦めておとなしくしているとしばらくして開放してくれた。



「それで、鬼頭さんはどこが悪いんですか?」


 ここまで来たのだから、これくらい聞いても許されるだろう。


 彼女は少し考えると自分の胸に手を当てる。


 胸というか自分のおっぱいを自分で触っている。


「ここが少し悪くてな」


 鬼頭さんの顔はニヤけている。


 僕をからかっているのだ。


 それはわかっていても、僕はたまらず赤面してしまう。


 うぶな僕の反応をみて更にいじめたくなったのか追い打ちをかけてくる。


「もんでくれると良くなるかもしれん。どうだ、1つもんでやってくれ」


「///」


「冗談だ。真に受けるなよ、こっちまで恥ずかしくなってくるだろ」


 ちなみにだが、彼女は全然恥ずかしがってなど無い。


 ただただ嬉しそうだ。


「さて、そろそろ戻るとするかな。ゆかりが待っている」


 僕たちは、その言葉で病室に戻った。


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