160話 騒いだらダメですか?
電車を降りて少し歩くと直ぐに、病院についた。
存在感のある大きな建物。
「病院が白いのは、白が衛生的な色だからなんですよ」
「そうだったのか。でも汚れが目立ちやすくないか」
「だから良いんですよ。目立つからこそ掃除して衛生が保てるんです。まあ、他にも白いのには理由があるみたいなんですが」
院内に入って上の階へ向かうべく、近くのエレベーターに乗り込む。
「そんなに固くならなくて大丈夫だよ」
皆越先輩が、僕の力が入った肩に手を置いてくれた。
「すみません。ありがとうございます」
「泰君なら兄さんにも気にられるとおもうぞ」
ベルの音がなりエレベータの扉が開く。
すぐ正面には面会場兼、食堂がある。
先輩はそこには目もくれず左右に伸びた通路を左に曲がっていく。
僕もそれに続いた。
ほんの少し歩くと、先輩が1つの病室の前で止まった。
「ここだ」
表札には520室と書かれている。そして、
「先輩、お兄さんって女性だったんですか!」
表札に書かれている名前は、鬼頭風香
「そういえば言ってなかったっけな」
いや、言ってなかったけって……
その時目の前の扉が開いた。
「おっ、やっと来たか!それと、君が泰君とやらか?」
出てきたのはボーイッシュな見た目の人だ。
声も女性としたら低め。僕から見てもかっこいいと思えた。
「あ……」
目の前の彼女は僕の後ろを見ると苦い顔をする。
僕も振り返って見るとむこうの廊下から看護師が睨んでいた。
きっと外で騒いで板からだろう。
「中で話そう。ほら入って」
僕は促されるままに病室に入る。
中は一般的な作り。ベッドと机とテレビがあるくらい。
後は、ベッドの上にノートパソコンが置いてあるくらいだろうか。
「何かされてたんですか」
「ああ、ちょっと小説を書いていてな」
「そうなんですか?ちょっと見せてくださいよ」
彼女はちょっと困った顔をしたものの、直ぐにもとに戻った。
「そうだな……今書いているのは流石に見せられないが……」
そう言うと枕の下からアイパッドを取り出した。
「何でそんなところに?」
「そりゃ決まってるだろ、人に見せられない本を読んでいたんだよ」
いや、人に見せられないような本を病院で読むなよ。
そしてそのデータが入ったタブレットを簡単にさっきあったばかりの人に何のためらいもなく渡すなよ。
僕は若干戸惑ったが、渡してきたそれを受け取る。
画面を見てみるとPDFリーダーが開かれていた。
そしてタイトルを見てみると、
「『俺の妹たちが可愛い』じゃ無いですか!え⁉もしかして加藤ルル先生ですか⁉」
この小説は僕が今1番ハマっている小説だ。
ちなみに僕はシスコンではない。
「そうだが、それがどうかしたのか?」
「サインください!」
僕は急いでカバンからペンとメモ帳を取り出す。
こんなものに書かせるのは失礼だと思うが、生憎色紙を持ち歩いてなんかいない。
「すまない、俺は連帯保証人にだけはならないって決めてるんだ」
「…………」
「…冗談だ。早くそれを渡せ」
鬼頭は僕のペンとメモ帳を奪い取ると、サインを書いてくれた。
「あの、雪本泰さんへっていれてください」
「ゆたかさんへ……っと、はい。書いたぞ」
「ありがとうございます!」
僕は折れ曲がったりしないように文庫本に挟んでからカバンにしまう。
皆越先輩はその様子を面白くなさそうに見ていた。




