15話 たまには1人じゃダメですか?
僕、雪本泰は休日になると行きつけの古書店へ行くのが好きだった。
最近は何かと忙しくて行けていなかった。なのでそこへ向かうのは数週間ぶりとなる。
通いなれた路地を歩く。車が通るのには少し狭いが、歩くには十分な幅あるその道を進んでいく。日当たりが悪いためか少しじめじめした感じがあるが、嫌いではない。
日影が好きと言うとまるで根暗のようだが全くその通りなので何も言えない。
今回向かっているのは、山本古書店という古本屋だ。店主の名前は佐藤さんだが山本古書店だ。なぜその名前となったのかは本人しか知らないらしいという噂だ。
そんなこんなで古書店に到着した。
外観は如何にも古本屋といった感じの店構えとなっている。よく言えば趣のある、悪く言えば古ぼけたと言ったところだ。
建付けの悪い引き戸を開け中に入ると、古くなった紙の匂いが鼻についてきた。この匂いが嫌いな人もいるかもしれないが、僕はこの匂いを嗅ぐと落ち着く。
店の奥には店主の佐藤さんが半分本に埋もれながら座っていた。どうやらこっちに気付いたようで、あまり愛想が良いとは言えない顔をこちらに向けてきた。
「なんだ、泰か」
「こんにちは、お久しぶりです」
2人の間にいつもそれ以上の言葉が生まれることはない。
話しかけたこと自体はあるが、特に反応を示してくれることはなかった。
それでも自分は割と気に入られている感じはしていた。まあ、特に根拠などないから真相は分からないが。
いつものように狭い店内を見て回る。ここは部室より少し狭いが蔵書の数なら負けず劣らずの量だ。
古本屋特有の途中の巻が抜けている本やそもそも1巻が無いものなど様々だった。
どれもマイナーな本ばかりが並んでいる。雑多に置かれているのも相まって背表紙くらいは見たことはあるはずなのにほとんど覚えていない。
適当に、1冊手に取ってみる。紹介書きを見るに恋愛小説のようだった。内容はよくありふれたような感じみたいだった。
僕の本の選び方はこんな感じで適当に手に取った本を選ぶことが多い。運命を感じると言ったら大げさかもしれないが、こういう選び方をすれば出会うはずもなかった本に会えると考えるとやめられない。
そういう事なので手に取った一冊を佐藤さんのところに持っていく。雑に張られた値札に書かれた代金渡す。これも僕と佐藤さんがかわす数少ないコミュニケーションの1つだ。
その後店を後にした。




