158話 対抗しちゃダメですか?
僕と弥久先輩、2人並んでの食事。
当然両者ドギマギしてしまい、ろくに会話も生まれない。
カップルシートということもあり2人で座るには、少し小さめに作られている。
そのため、僕の二の腕あたりに先輩の体温が伝わってくる。
鼻から息を吸えば、女の子の柔らかい香りがして思わず鼓動が早くなってしまう。
僕が皆越先輩を好きなのことに変わりは無い。
だがしかし、この状況が続けばいつ血迷ってしまうともしれない。
僕は早急にドーナツと麺を完食。
弥久先輩は、もとからそんなんに注文していたわけではなかったので僕と同じくらいに食べ終わった。
「食べ終わったし、そろそろ帰ろっか」
僕はこの危機的状況から脱出するべく、お盆を持って立ち上がろうとする。
でも、それは先輩が服の裾を掴む事によって止められた。
「あの離してくれませんか?」
「ヤダ……」
嫌と言われても僕にどうしろと言うのだろう。
「私帰らないから。泰が私ともプリ撮ってくれるまで」
それくらいで帰してくれるならまあいっかと思って、安易に承諾する。
僕は、一旦先輩を待たせてお盆をミスドに返しに行って再び戻ってきた。
「それじゃあ行きますよ」
「うん」
僕たちは、ショッピングモールに併設されたゲーセンに行った。
そこには当然プリクラもある。
数種類の機種の中から適当に目星をつけてカーテンをくぐった。
1枚目の撮影が終わり、確認される。
「弥久先輩せめてもう少し笑ったらどうですか」
「え?笑顔だけど」
先輩は、全然笑顔とは程遠い表情をしている。
能面のほうがまだ可愛げがあると言った感じで、ぶすくれた顔をしていた。
そうこうしているうちに2枚目が撮影される。
こんなので本当に満足なのだろうか?
連れてこられた身ではあるが、しかしだからこそこの状況は受け入れがたい。
どうにかして、先輩の笑顔がみたい。
別に深い意味は無いのだが……
僕は考えたが思いつかず4回目のカウントダウンがなる。
そしてひらめいた。
撮影のタイミングギリギリまで粘り、ここだと言うタイミングで弥久先輩の両頬を斜め上に引っ張る。
そしてちょうど良くシャッターが切れた。
「もう!何するのよ!」
先輩はご立腹の様子。
「ほら、これ見てくださいよ」
僕は、モニターに表示されたさっきの写真を指差す。
先輩は眉間にシワがよっているのに口元は歯を見せて笑っているという奇妙な表情をしていた。
「ぷっ、何よこれ(笑)」
先輩は思わず吹き出していた。
さっきまでの雰囲気が嘘のように。
「私だけじゃ不平等だとおもわない?」
先輩はニヤリと片方だけ唇の端を吊り上げて笑う。
割と魅力的に見える表情だ。
「別に思いませんけど?」
「なにー私にこんなことしておいてその態度?この〜」
先輩は僕の口を自分がされたように引っ張って伸ばす。
「いはいでふよ。へんふぁい」
僕はこんなに強くやっていない。
なので僕も強めにやり返す。
「ゆふぁふぁいはい!」
結構強めなのでそこそこ痛いと思う。
まあ先輩も同じくらいつまんで来ているのだが。
僕たちがじゃれついていると、最後のシャッターが切られた。
そして、最高の写真がやっと取れたのだった。
落書きタイムなのだが、特にこれと言って意味のあることは書いていない。
ペンの試し書きみたいなのをしたり、自分の名前を書いてみたり、それくらいだ。
プリクラを撮って満足したのか、その後は特に止められることもなく帰してくれた。
帰りぎわ、
「あ、そうそう。ゆかりから連絡くると思うから、くれぐれも見逃さないようにね。それじゃあ」
それだけ言い残すと帰りのバスへ乗り込んでいった。
そして、直ぐに扉が閉まる。
「僕もあのバスだったんだけどな……」
僕は次のバスが来るまで待たされた。




