157話 ミスドじゃダメですか?
僕は自分で選んだ服一式をレジへ持っていく。
そして、袋に入れてもらって用事も済んだし帰るかと思っていると弥久先輩が砂岩で何か拾っていた。
「泰、レシート落としたわよ」
僕はレシートは基本もらわないのでいつのだろうな?と思いながら、受け取ろうと差し出された紙を掴んだ。
だが、一向に先輩はその手を離してくれない。
僕も気づいた。
これがレシートではなく昨日撮ったプリクラだということに。
恐る恐る顔を上げてみると、先輩が口元だけで笑っていた。
睨まれる以上に怖い。
「泰さんこれはなんですか?」
普段使わない丁寧な言葉づかいは無理をしている感がある。
しかし、そんな呑気なことを言っている場合では無い。
「いやー、これは……」
「昨日は随分楽しかったようね」
「…………」
先輩には関係ないことだと思う。
思うのだが、僕のことを好きだと表明している故、後ろめたさを感じてしまう。
突き放してしまえば簡単なのだろうが、そんなことはしたくない。
そうやってズルズル続けていくのは卑怯だとわかっていはいるのだが。
「ぐぅ〜」というお腹の音。
僕のではない。弥久先輩のだ。
僕はこれは好機と切り出す。
「そ、そうだ。そろそろお昼ですよね。いやー、洋服選んでくれて助かったなー(ちらっ)」
「結局、自分で選んだの買ってたけどね。私が選んだのにはケチつけて」
凄くトゲトゲしている。
「なんだかいつもお世話になっている、最高に最高な弥久先輩にお昼ごはんを奢りたくなってきたなー」
「ドーナツ……」
「え?」
「ドーナツが食べたいって言ってるのっ」
「はいっ!それじゃミスドに行きましょうか」
弥久先輩はエンゼルクリームを取っていた。
どう考えても今の先輩はポン・デ・リングだと思う。
ライオンが怒ってるみたいだから。
まあ、口が裂けても言えないけどね。
僕はドーナツポップと肉そばを注文する。
ミスドの麺類ってなんか魅惑的に感じるのは僕だけだろうか。
「席は……あそこ……あ」
「どうしたの?行かないの?」
弥久先輩も同じ場所を見つけたのか進まない僕に不思議な顔を向けてくる。
先輩はまだ気づいていないようだ。
「う、うん」
僕は曖昧な返事をする。
だって唯一空いている席があるにはある。
それは、僕の角度から見ればわかるのだがカップルシートになっているのだ。
「あそこはやめといたほうが……」
「何してるの。早くしないと埋まっちゃうでしょ」
先輩は席が取られないようにとその場所まで移動する。
そして、かなり近づいたところでやっと気づく。
「あ……別のところにしよっか」
僕も反対する理由どころか元々そのつもりだったので他に席が無いかキョロキョロする。
でもそれが仇となった。
ちょうど1人の男性と目があった。
年ははっきりとはわからないが20代前半位。
大学生くらいだろうか。
そんな彼も、お盆を持っていて上には今さっき買ったばかりれあろうラーメンが載っていた。
その男性は僕とあった目を一瞬そらして、カップルシートを見る。
そのまま弥久先輩を見て、再び僕に戻ってきた。
「あ、すみません。ごゆっくりどうぞ」
何を勘違いしているのかは猿でもわかる。
「いえ、僕たちは」
「遠慮なさらず、私は別の所を探しますので」
僕の話など聞いてくれず足早に去っていった。
ちょっと行った先に3人が座れるカウンターが空きそこに座っていた。
非常にまずいことになった。
カップル席以外にもあるにはある。
だが、譲られた手前、更に開いてる席は譲られた張本人の隣ともなると気まずい。
「これは、仕方が無いのよ、うん仕方がない。そうよね泰」
弥久先輩は自分に言い聞かせている。
ちょっと顔がどっぷり宗教にハマっている人みたいになってて怖い。
でも、カップルシートに座る以外に選択肢が思いつかなかった僕は、先に座ってじっと待っている先輩の隣に何故か緊張しながら座った。




