153話 ノベルゲームじゃダメですか?
いつも通り授業が終わって、部室に入るとそこにはノートパソコンを見入る皆越先輩がいた。
何か書類でも作成しているのかな程度に思い、いつもの席につこうとする。
「プラネタリウムはいかがでしょう?どんな時も決して消えることの無い、美しい無窮のきらめき。満点の星々が皆様をお待ちしております」
流れてきたのは抑揚の薄い声。
おそらく皆越先輩のパソコンから流れてきているのだろう。
周りには僕だけでなく、弥久先輩や瑠璃が居るのだが特に気にしている様子はない。
僕は何をしているのか気になって、皆越先輩が見ている画面を覗き込む。
そこにそこに映っていたのは、水色の髪色をした少女だった。
「皆越先輩なに部室でギャルゲーやってるんですか」
そう、先輩がやっていたのは明らかに美少女ゲームだった。
学校でゲームをするだけでもどうかと思うのに、流石にギャルゲーはもっとどうかと思う。
「失礼な。泰君、これはノベルゲームだよ」
「そうだったんですね。ここ文芸部だからそれなら問題ないですね」
皆越先輩はそうだぞ、と言わんばかりに視線を戻した。
「とでも言うと思いましたか?」
先輩は、どうしたのかという不思議がる視線を向けてくる。
「いや、だからそんな言い訳が通るわけ無いでしょ」
「通らないのか?」
「通りませんよ」
「だって、ゲームとは言っても名ばかりでほとんど小説と変わらないぞ。違うところと言えば音声があるくらいだが、近頃は音声で楽しむ小説とかもあるらしいしな」
妙に筋が通っていて反論しにくい。
「皆はどう思うんですか?」
どうしようも無くなったので他2人に投げた。
「私はどっちでもいいですよー」
瑠璃は自分の書いている小説から目を離さないまま答える。
本当に興味が無いといった態度だ。
「いや、私はそのゲーム好きだし……そもそも進めたの私だし……」
皆越先輩は勝ったと言う笑みを浮かべた。
「泰君も変な意地はってないでやってみたら良いだろ」
先輩が僕を視線で射抜いてくる。
「……わかりましたよ」
僕がそう答えると、まだ途中だったゲームを辞めて僕に貸してくれた。
「あれ?途中だったんじゃないんですか?」
「君はやめろと言う割には強制的に止めたりはしないよな」
「昔無理やりぶっちぎられたことがありますから……」
「あははは、それは大変だったな。それと、これは家に持って帰ってもらっても構わないよ。部活の時間でやったところでどうせ終わらないだろうしな」
それは流石にと、断りはしたのだが押し付けてくるので受け取っておいた。
次の日。
尋常じゃ無い睡魔と戦い見事6限目に勝利下僕は、部室に向かって歩いていた。
「ふぁ〜」
もう放課後ということもあり、抑えることなくあくびをする。
「眠そうだな」
そんな時後ろから皆越先輩の声が聞こえてくる。
気の抜けた表情を見られるのは恥ずかしい。
それも、皆越先輩からだからなおさらだ。
これが、弥久先輩や瑠璃だったならなんとも思わなかったと思う。
「昨日寝ずにゲームしてしまったので」
「あれ?確か寝れなくなるほど長いシナリオじゃなかった気がするんだが」
「初めた時間が遅くてですね。初めはすぐやめるつもりだったんですが、ハマっちゃいまして」
嘘は言っていない。
初めた時間は8時頃。
遅い時間と言うには、厳しいかもしれないが早いか遅いで言ったら遅い部類だろう。
そしてハマった結果、それから何度もやり直してしまった。
朝鏡で顔を見てみたら、涙で腫れためと隈でひどいことになっていた。
隈はどうにもならないが、目の腫れは何とか引いているので先輩に見られずに済んでいる。
「それでどうだった?面白かっただろ?」
「はいっ、とっても!……あ、まあまあですね」
つい情景反射で答えてしまって、慌てて言い直す。
「そんな意地はらなくって良いよ(笑)」
「はい。面白かったですよ。ラストのシーンは泣けました。普段あまり泣かない方なんですけどね」
皆越先輩は僕が話す感想を嬉しそうに頷いて聞いてくれた。
「そうだ、まだ他の作品があるからそれをやってみると良いよ。予想して、USBでデータ持ってきてるからな」
先輩はウインクして自慢気にUSBメモリーをポケットから取り出す。
こうして、僕は沼に引きずり込まれていった。
後から知ったことなのだが、先輩や僕みたいな人のことを鍵っ子と呼ぶらしい。




