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ライトノベルじゃダメですか?  作者: 東雲もなか
始まりの文芸部
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14話 電子書籍じゃダメですか?

 騒動から数日経った部室では以外にも以前とほとんど変わらないくらいに空気が戻っていた。

 と言っても、完全にとはいかないのだが。それでも、落ち付きが出てきたと捉えれば強ち悪いものでもないだろう。

 まあ、言って黙り続けることができない(ゆたか)の性格故なのかもしれないが。

 そう言うことで今日も今日とて雑談を持ちかけていたのだった。


「先輩たちっていつも紙の本読んでますけど、電子書籍とか読まないんですね」

 僕たちの学校では、スマホの持ち込みを許可されている。なので電子書籍でも問題ないはずだ。実際自分は、部室以外で本を読むときは電子書籍を使っている。


「ほう。それは私たちに喧嘩を売ってると取ってもいいんだな?」

 先輩2人が不敵な笑みを浮かべる。口角は見たこともないくらい吊り上がってるのに、目が全く笑ってない……


「あの、なんかすみません」

 何が何だかわからなかったが、とりあえずパンドラの箱を開けてしまったことは分かった。


「まあ冗談はさておき……私はこの紙の手触りも含めて本を読むのが好きなんだよ」

「そうね、私も紙の方が好きだわ。電子書籍も悪いとは言わないけど、どうも読んだ感じがしなくて」


「でも、本って場所とるし邪魔じゃないですか?部室の本も多くて大変そうですし」

「管理は大変だな……量が量となればかなり置き場に困るしな。量だけじゃなくて、カビとかにも注意しないといけないし」


 弥久先輩が立ち上がり両手を大きく広げる。

「あんた、こんな量の本に囲まれて何も思わないの?」

 突然そんなことを言ってきた。

「えっと、どういうことですか?」

「こんだけの量の本に囲まれて過ごせるなんてわくわくするじゃない。控えめに言って最高でしょ!!」

「そっ、そうですねー」

 その考えはよくわからなかったが、同意しないと何されるかわからないほどの気迫だったのでそうやって返答しておいた。



 この討論の中扉の開く音が聞こえる。若干、弥久先輩の方がぴくっと反応していた。

「皆越さん借りていた本返しに来ましたよ。それで何の話をしていたのですか?」

 入ってきたのは、池田先生だった。


「(また厄介なのが1人増えた……)」

「いやぁ、泰君が電子書籍の話題を出してな。私たちは紙の本の方が良いということを教えてあげていたのだよ」

 僕は別にそんな教え説かれなくても結構です。

「そうですね。私も紙の本の方が好きですね。やはり読んだ後の達成感と言いますか、満足度は敵いませんですしね。それでも電子書籍も良いところはありますし、利用することはしばしばありますよ」


「そんな。先生裏切るんですか!」

 なんだかよくわからないが弥久先輩が熱くなってる。テニスプレイヤーみたいだ。

「雪本さん何で彼女はこんなことになってるのでしょう……」

「分かりません。僕が何か変なスイッチを押してしまったかもしれないです」


「これだけ本があれば並んでるのを見るだけでも楽しいが、地震とかが怖いな。たまにつぶされて死ぬ人も出てくるしな。一応対策は取ってあるが」

「そうですね。しっかり対策はされてるみたいですが、皆越さんの言うように怖くはありますね」


「でもどうせ何時かは死ぬんだし本に死ぬんだったら悔いはないかもしれないわね」


 また、弥久先輩が変なことを言っているのでもう聞こえないふりをすることにした。皆も同じ判断をしたようだ。

 はっきり言って今日の弥久先輩はうざい。


「先生は家の本とかどうしてるんですか?」

 先生の読書狂は誰もが知る事実だ。ならば家にある本も相当なものなはずだ。

 ならばどういった管理をしているか気になるところだ。

 本で圧死なんてしたら死んでも死にきれない。


「私ですか?地震対策なんてしてませんよ」

「え?それって危なくないですか?」

「だって倒れてくる心配何でないですから」

 笑顔で答える先生。それは過信というものではないだろうか?

「あの……先生?その考えは危ないんじゃ……」

「安心してください。そうですね、雪本さん突っ張り棒って知ってますか?ほら部室の本棚にも使ってある。でもですね、私の家本が突っ張ってるんですよ。天井に」

「はい?」

 僕は何か聞き間違えをしたのだろうか。先生の言っている意味をうまく理解できなかった。


「だからですね。天井までびっしり本で埋まってるので倒れてくることがあり得ないのですよ」

 なるほど。つまり先生は先生だったという事か。

 僕は考えることを止めた。



「それはそうと文化祭の出し物はもう決めたんですか?」

『(ギクッ)』

 それを聞くなりまるで苦虫でもかみつぶしたような表情になる先輩方2人。

「文化祭何か出し物でもするんですか」


「はぁ……全く。また今年も何するか決めてなかったのですね」

「ちなみに去年とかは何をやったんですか?」

「去年は感想文の展示だな」

「あの、それ、何が面白いんですか……」

 なんだろうそのやる方も見る方も苦痛しかないような出し物。というかここまでわざわざ感想文なんか身に来ないだろう……


「さすがに今年はもう少しましなのをやってもらいたいのですが……」

「と言われてもな。そうだな……うーん」

 腕をまるでウルトラマンのようにして考える皆越先輩。

 そしてこちらを見てきた。先輩は何か閃いた表情をしている。

 何か嫌な予感がした僕はこの場から逃走を試みる。しかし、弥久先輩に腕をつかまれてそれは阻止された。


「先生決まりました。泰君が小説書いてくれます」

「え!?僕そんな事一言も言ってないですよ」


「分かりました。ではそのように報告しておきますね」

「ちょっと先生!」

 必死に呼び止めようとするも、先生はよほど面倒なのか素早く部室を後にしていた。


「先輩、僕小説とか書いたことないんですが」

「まあ安心したまえ。もちろん私たちも協力する。要は主に弥久にとっての隠れ蓑といったところだ。弥久は自分の名前で小説出すなんて嫌がるだろうからな」


「僕だったら嫌がってもいいんですか……」

 不満を漏らすも聞き耳を持たない先輩。

「時間もまだあるしゆっくり内容を考えていけば良いさ」


 斯くして強制的に小説を書くことになった雪本泰だった。

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