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ライトノベルじゃダメですか?  作者: 東雲もなか
体育祭編
147/216

146話 主人公じゃダメですか?

 部活動リレーの開始が近づき、僕たちは入場を済ませる。


 グラウンドには、各部活で選ばれた者たちが4人並ばれていた。


 全ての部が参戦しているわけではなく、文化部や人数が満たない部に関しては参加を辞退しているとことも多い。


 僕たちは文化部ながらも参戦している数少ない部である。


 僕は、先輩たちの気遣いからトップランナーを任されることになった。


 さっきの今でアンカーを任せるのは酷だと思ったのか、そもそも役不足なのか。


 あるいはその両方なのだろう。


 何はともあれ、スタートラインに並んだ。


 周りにいるのは、いかにも速そうな人ばかりで萎縮してしまう。


 そんな僕をよそに、時間は進んで行きやがて、スターターが鳴った。


 僕は慌てて走り出す。


 しかし、ワンテンポ遅れてしまった僕は周りに少なくない差をつけられてしまった。


「やばい……」


 このままでは、先輩に顔向けできない。


 僕はそう思い、必死に走ったのだがそれに反して足はもつれてうまく動いてくれない。


 またダメなのだろうか。


 悪循環に陥った僕自身を情けなく思い更に、ペースが落ちてしまう。


 何度も練習で走ったこのグラウンドが異様に長く感じる。


 こんなに遠かったっけ?と思わせるほどに。


 それでも足を止めなければやがて、第2走者の皆越先輩が見えてきた。


 どのくらい時間がかかったのかわからないが、普段より明らかに長い時間だったことには違いない。


 呼吸は苦しくない、体もそれほど疲れて居るわけでは無い。


 だと言うのに、どうしてだか走っているのがつらかった。


 それも、もう何メートルか走れば終わる。


 早く皆越先輩にバトンを繋げなければと、動かない足で無理やりペースをあげようとした。


 でもそれがいけなかったのか、僕はあの時の様にずっこけた。


 しかしあの時と違ったのは、僕がアンカーでなかったこと。


 そして、テイクオーバーゾーンに入っていた事だ。


 皆越先輩は流石の対応力で直ぐに僕のもとまで来ると、バトンを受け取る。


 僕が転んでもバトンを手放さなかったのがせめてもの救いだった。


 もし手放していたら、かなりのタイムロスになっていたことだろう。


「良く頑張った、後は任せておけ」


 皆越先輩は去り際にそう言い残し、先頭集団を追いかけていった。


 僕は2度擦りむいた膝をかばいながら、邪魔にならないようにコース内側の列に履けた。



 皆越先輩の猛追は、僕の作った遅れを取り戻せないまでも1位がまだ狙える位置まで回復させた。


 やがて、弥久先輩にバトンが渡る。


 全くロスのない、きれいなアンダーハンドパスだった。


 それが幸をなし、弥久先輩は2位に順位を上げる。


 残すは、先頭のサッカー部だけだった。


 先輩は真剣に追いかけていたのだが決定的な瞬間は生まれない。


 一時期は近づく場面もあったのだが、それを感じた相手はまるで今まで手を抜いていたと言わんばかりに速度を上げた。


 弥久先輩はいつものツインテールではなく邪魔にならないように後ろでまとめている。


 それが激しく揺れる様を見ていると、先輩の必死さが伝わってくる。


 でも、どれだけ気持ちが勝っていようともそれに実力が伴うわけではない。


 残酷だが、最終的にははじめより先頭に少し離される結果となった。


 最後にバトンが渡ったのはまた皆越先輩だ。


 皆越先輩はまだ息が整っておらず肩を上下に大きく揺らしている。


 バトンパスもスムースに通っていたが、さっきほどの美しさはなかった。


 それでも、先輩の瞬足は健在で、前走者を追い上げる。


 最後のコーナーを曲がり終える頃には、横並びになっていた。


 だが敵も、そう安安と勝たせてはくれない。


 2人はラストスーパーとで更にスピードを上げる。


 しかし、皆越先輩は相手より若干遅く、さっきまでは完璧に並んでいたのに今ではわずかに遅れを取っている。


 ここに来て、人より多く走っているのが響いてきたのだ。


 それでも、まだ諦めた様子はない。


 ただ1位になることだけを求めて走っている。


 そんな皆越先輩とふと目が合う。


 先輩が不敵な笑みを浮かべたかと思うと、ペースを取り戻した。


 否、さっき以上の速度を出している。


 そして、驚く敵を気にもとめず抜き去りそのままゴールテープを切った。



 競技が終わり、退場門。


 皆越先輩は落ち込んでいる僕にオリーブ冠をかぶせてくれた。


「ほら、泰君のために1位取ってきてやったぞ。な、大丈夫だっただろ?」


 先輩は僕に優しく微笑む。


 僕は先輩を好きとかそういうの抜きにして、かっこいいと思った。


 だが、そう思ったのもつかの間。


「これやって見たかったんだぁ!なー、弥久今の私超カッコよくないか?」


「そうね、その言葉を胸にしまって置くことができたらね」


 でも、先輩は先輩何なんだなと少し安心した。

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