145話 引きずっちゃダメですか?
昼休みが終わったことをチャイムが告げる。
このままいつまでも落ち込んでいると皆にまた迷惑をかけてしまう。
それだけは避けないといけないと思って、気分をできるだけ入れ替える。
流石に全部忘れるというわけには行かなかったが、あり程度落ち着くことはできあた。
午後に集まっているのは集団演技を除けば、PTA種目などの特典に関係しないものがほとんどだ。
その点では少し良かったと思う。
僕が、応援席につくと皆すでに準備を始めていた。
「もーおっそーい!」
僕を見つけると不満をぶちまけてきたのは委員長だった。
「ごめん、ってまだ時間じゃないだろ?」
「何言ってるの、演技初めのほうだから早く準備始めないといけないに決まってるじゃん」
まだ、5分前だから良いと思っていたのだがそれは間違っていたようだった。
特に自分は、曲がりなりにもバックパネル長なのだ。
その自覚が足りなかった。
これはこれからの行動で取り戻すしか無い。
僕が今やることは少ないが、それでもできることをやろうと思った。
やがてやってきた2組の順番。
開始の合図で、全力疾走で入場する。
砂埃が舞い、その霞が完全には消えていない中僕は笛を吹いた。
一斉に変わるパネルは圧巻だ。
この時僕は、この役割を受けて本当に良かったと思う。
いやいや受けたわけだが、でも受けたからこそこの景色を見ることができたのだ。
皆に感謝しか無い。
なんだか皆の頑張が形に現れたのを見ると、つい感傷的になって涙が出そうになるのをぐっとこらえた。
結果としてブロック演技は成功に終わった。
他と比べてよかったとか、ましてや優勝したというわけではない。
その点で言えば、僕が良いと思っただけ。
ただそれだけだ。
でも、素晴らしいと思った。
それだけでも十分だと思う。
ブロック演技が終わった後は、部活動リレーがあるので直ぐに集合する。
初めの方に順番が終わったので先に入場門近くで待っていると、先輩2人も来た。
僕は弥久先輩の近くに行く。
「あの時の声、先輩ですよね」
「え、なっなんのことかなーー」
先輩はごまかしているつもりらしいがバレバレだった。
リレーで最後に叫んでくれた声は良く聞いたことがある弥久先輩の声だった。
あれがなければ僕は最下位になっていたことだろう。
そうならなかったのも、弥久先輩のおかげだ。
「ありがとうございました」
「だから、私じゃないってばっ!」
「はい、そういうことにしておきます」
僕ははにかみながら言った。
「そういうことって……まあいいや」
どうにか訂正をしたいようだったが、それそのものが逆効果だと悟ったのだろう。
素直に諦めていた。
「瑠璃の分も私が頑張るから任せてくれ」
皆越先輩は胸を張って自身げに言う。
そしてそのままの、ふざけているのか真剣なのかわからない表情で僕の肩に手を置く。
僕の耳元まで口を寄せて言った。
「次最後を走るのは私だ。何があっても1位になってみせるから安心して走れよ。私だけじゃない、弥久も居る。どうだ?心強いだろ」
皆越先輩は歯を見せてニコッと笑ってみせる。
弥久先輩はしかの隅でこっちを見ていた。
目を閉じ深呼吸をする。
再び目を開けたときにそこにいたのは、頼もしい先輩2人だった。
「よし、次こそ勝つぞ」
「それあんたが言うのね」
弥久先輩が突っ込んでくる。
「そうだな、勝つぞ」
僕は手のひらを下にして自分の前に出した。
何をするのか察したのか、皆越先輩は、それに重ねてきた。
そして、仕方ないといった様子で弥久先輩も手を重ねてくる。
更にもう1人上から勢いよく手を重ねる人物がいた。
「私をのけものにしないでください!」
何故こんなところにいるかわからない瑠璃だった。
皆越先輩はそんなこと気にする様子もなく、リーダーたる態度で指揮を取る。
僕のなんちゃってとは大違いだ。
「ぶんげーぶー!ふぁいっ!」
『おーー!』
それだけ大きな声を出せばもちろん周りから見られ、僕たちは少しだけ恥ずかしい思いをしたのだった。




