140話 開会式じゃダメですか?
役割を無理やり押し付けられた。と言っても、その殆どは学級委員長がやってしまっていたので僕は時々その手伝いをするくらいだった。
そんなことだったので体育祭の練習は意外とあっさり終わってしまいいよいよ本番当日になる。
瑠璃の怪我はまだ治っていなかったので本部で見学することになっているらしい。
結果として、部活動リレーでは皆越先輩が瑠璃の分も走ることになっていた。
瑠璃は、「私はこれを見越して、怪我をしたんですよ。どうです私の完璧な作戦は」とか、「私の屍を超えていけ」とか言っていたのだが皆越先輩以外は無視していた。
皆越先輩に関しては、自分もそのセリフを言ってみたかったのか羨ましそうにしていた。
何か瑠璃に話していたみたいだったが、僕が知ったことでは無い。
「ちょっと泰良い?」
一応、代理ではあるが実行委員なので学級委員長に呼び出された。
「どうしたんですか?」
「最終確認をしておこうと思ってね。大丈夫そう?今日は1人でやってもらわないといけないけど」
普段はぞんざいな扱いを受けているが、彼女なりに心配をしてくれているのだろう。
「まあ、何とかなるとおもう」
特に難しいこともないし、大丈夫だろう。
何なら笛を吹くだけなので、こっちのほうが簡単かもしれない。
「うん、なら良かった。じゃあ私はクラスの方あんま行けないかもだけど頑張ってね。他のみんなにもよろしく」
そう言うと本部テントの奥へ行ってしまう。
僕は彼女を見送ると、自分の応援席に戻った。
開会の時間が近づき全校生徒は、入場門のところに整列する。
そこから行進でグラウンドを1周してから朝礼台の前にブロックごとに並んでいた。
それから、定型文の選手宣誓があったり、校歌を歌ったり、校長が話したりして、いつの間にか開会式は終わっていた。
1年生は、最初に競技があるので応援席につかずにまた入場門に並んだ。
並んでいるときに練習のことをふと思い出す。
委員長に殺されかけたこと、委員長に殺されかけたこと、そして委員長に殺されかけたこと・・・etc
僕はダラダラと並んでいる同胞に向かって叫ぶ。
「みんなーさっき僕が委員長に呼ばれた時、委員長がみんなによろしくって行ってたぞー」
その言葉にあの地獄を思い出したのか表情が一気に引き締まる。
周りの生徒は何事かとこっちを見たが、直ぐに練習の時のことを思い出したのか納得していた。
嘘は言っていない。
みんなによろしくと言われたのは紛れもない事実だ。
タイミングが良かっただけ。
ただそれだけだ。
そして、時間になり華やかな入場歌が流れる。
それとは正反対に、僕たちのクラスは死を覚悟した表情で戦場に赴くかのように入場したのだった。




