139話 足で使っちゃダメですか?
今日こそは自主練をしようと、朝集まった。
しかし学校に来てみれば、瑠璃は右足にギプスをしていた。
「どうしたんだ?」
「あーいや、昨日ので折れてたみたいです」
昨日の……つまりスクワットのことだろうか。
もしかして、自分のせいで怪我させてしまったのだろうか。
「ごめん、自分のせいで」
僕が謝ると、瑠璃は慌ててそれを否定する。
「いやいや、違いますよ。そもそもスクワットと言い出したのは私ですし。悪いのは私です」
瑠璃は自分が悪いと言っているが、蹴ったのは僕なんだから悪いのは僕だろう。
「いや、瑠璃は悪くないよ。女の子を怪我させてしまうなんて……」
「あ、はい。そう……ですね」
瑠璃はまだ何か言いたい様子だったが途中でやめた。
「お詫びをしたからと言って償えるとは思ってないけど、何かしてほしいことかない?」
「して欲しいことですか。うーん、階段が大変なのでおぶってもらえると助かるのですが」
「それはお詫びにならないよ。怪我させたんだからそれくらいはして当然だろ。そうじゃなくて、もっとほら」
瑠璃はしばらく考えていたが、もう少し待ってほしいという事だったので後でまた聞くことにした。
そんな事だったので当然練習なんてできるはずもなく、やることもないので教室行くことにした。
階段のところはさっき言ったようにおんぶをする。
「えへへ、泰のせなか~ ……っといけないよだれが」
「勘弁してくれよ……」
本当なら怒りたい気持ちでいっぱいだが、自分が悪いので強く出ることができない。
「ほらついたぞ」
それは教室にではない。
僕たちの教室がある階までという意味だ。
「教室までお願いできませんか?どうも折れた足がうずいて」
若干調子の乗った感じで言ってきたが、断ることができずそのまま廊下を歩く。
朝早いので人がいないのが救いだ。
「くっ、わかったよ」
なんだかんだで、教室にたどり着くことができた。
教室にはまだ誰も来ていないみたいで、鍵がしまっていた。
瑠璃を廊下にある椅子に座らせ、鍵を取りに行ってから教室に入った。
昼休み。
外で練習があってたので、瑠璃を教室に運ぶためにまたおんぶをする。
「ゆたか~お腹すいたので売店で何か買ってきてください」
この様子からわかるように、今では大分調子に乗って来ていた。
まあでも、これくらいなら仕方ないと思い、それに従って世話をやっていた。
瑠璃を教室まで送り届けて、売店からパンを買って帰ってくる。
「ほらメロンパンかってきたよ」
僕は買ってきたパンを渡す。
「ありがとうございます。あ、そうだ。思いつきましたよ。お詫びの件」
瑠璃は袋を開け、ちょっと小さ目のメロンパンにかぶりつく。
「ゆははわ、わはひのおひょふぇふぁんひはっへふははひ」
「飲み込んでからしゃべれよ。何言ってるかわからん」
「だから、お詫びとして私と結婚してください」
うん、もう良いだろう。
僕はよく我慢した。
「誰がなるかボケェ!人が下手に出てるのを良いことに!」
さすがに堪忍袋の緒が切れた。
僕が瑠璃に切れるのは間違っているのは分かっているが、我慢の限界だった。
ふと、瑠璃のギプスに目が行く。
「あれ?そういえば、僕が蹴ったのって左足じゃなかったけか」
でも、瑠璃がギプスを付けているのは右足。
つまり自分で蹴った方の足だ。
「……そんなことはどうでも良いんじゃないですかね」
「お前、自分で蹴っておいて、自分で怪我したんじゃないのか」
「そんな事……ないですよ。あ、左足にもひびが入ってたみたいでズキズキするな……」
瑠璃はそんな戯言を抜かしながら、僕の顔をうかがってくる。
そして、もう弁解は無理だと思ったのか、立ち上がり教室の外へ逃げていった。
僕もまさかあの足で逃げると思っていなかったので怪我人相手に撮り逃してしまう。
まあでも、ここが教室なので待ってれば勝手に帰ってくるだろう。
と思っていたのだが、昼休みが終わっても帰ってこなかった。
次の日になってからようやく顔を出したのだが、本人に聞くと走ったせいでひびが広がって保健室から病院に直行していたらしい。
瑠璃の馬鹿さ加減にもう怒る気も失せた。




