136話 バックボードを教えちゃダメですか?
「えっと、じゃあみんな赤い面を表にして頭の上上げて」
僕がやる気がない感じで言うとそれに影響されたようにバラバラとボードが上がる。
「僕が笛吹いたら裏向けくださーい。『ぴゅーい』」
笛がなるとさっきのようなやる気なさでパラパラと変わる。
「はーい、おっけーでーす」
さて、これで今日の練習も終わるか。
まあ1日目なのでこんなもんだろ。初日から力を入れても疲れるしね。
「何が、『はーい、おっけーでーす』よ。ガソスタのバイトじゃ無いのよ。あんなのでOKなわけ無いじゃないのよ」
せっかく練習終わってサボろうと思ったのに生徒会長が邪魔してきた。
「ひょえ?」
「え?私何か間違っていること言ったかしら?もしかして私がおかしいの?」
僕は首をかしげておく。
これでごま、かせたら良いなー、なんて。
「とか言うわけ無いでしょうがー!」
関西人も真っ青なノリツッコミと共に、僕の顔が真っ青なドロップキックが飛んでくる。
「あ、ダメだ。いい感じのところに入った……」
「それは良かったわね」
「よくねーよ、最悪って意味だよ。わかるだろ」
っていうか、わかってて言ってるだろ。
「まあ、そんなことは良いんだけど、ちゃんと仕事やってよね」
「そんなことって……。じゃあ言わせてもらうがな、仕事っていうのは労働に伴った報酬がもらえるものであって、こんな無理やりタダ働きさせられることじゃないんだよ」
「あら、報酬なら出るわよ。あなたに入らないだけで」
こいつもしかして瑠璃と一緒で頭にちょうちょでも飼って居るのだろうか。
「僕にその報酬が入らないことが問題なんだよ」
「はぁ……しょうがないわね」
ようやく報酬を出す気になったのだろうか。
「ガリガリくん上げるから、ね?」
こいつ全くわかってない。
「いやもう良い……僕が疎かだった」
なんかこれはもう負けた気がするが、きっとその通りなのだろう。
生徒会長は、勝ち誇った笑みを浮かべているから演技だったのだろう。
見事に僕はそれにハマりました。
「えっと、じゃあ真面目にやろうか……」
僕は、若干列が乱れてきだしたみんなに言った。
皆は、嫌そうにしているが、別に逆らう理由もないようでその声に従いもう一度列を整えた。
「(と言ってもやること決めてないんだよなー)」
そんなつぶやきがつい漏れる。
大体、何やればいいかわから適当になってしまったのだ。
状況は全く変わってないので、どうしようもない。
「全く、そんなことだったのね。なら少しくらい言ってくれたら手伝ったのに」
その気があるならもっと早く言ってほしかった。
会長は、僕とみんなにプリントを配りだす。
「もしかしたら使うかもって、作って置いたの」
渡されたそれを見ると、バックボードで誰がいつどちらの方向を向ければ良いかが書いてあった。
その通りにすると、文字や模様が浮かび上がるようになっている。
「じゃあ、みんな1回この通りにやってみよっか。あ、増え渡し持ってないや。まあ手拍子でいいか」
そう言うとぱちんと手を叩く会長。
一斉にパタパタとボードがきれいに変わって行く様子を正面で見ていると、ちょっと感動がある。
ただそれよりも。
「これって、僕要らなくない?」
残りの時間僕は1人、己のアイデンティティを問うのだった。




