134話 恋愛小説じゃダメですか?
日にちが進むと体育の授業中だけでなく、1日中練習の日が出てくる。
その時は主に入退場の練習になるので個人競技のない僕は観客席に座っていることが多くなる。
ただじっと座っているのは、授業を受けているときと違ってこれはこれで疲れるものだ。
何もやることが無いので、過ぎていく時間の流れも遅く感じる。
せめて本でもあったなら違ったかもしれないが、生憎そんなものは今持っていない。
「瑠璃、最近どう?」
あまりにも暇を持て余していたので、隣りにいる瑠璃に適当に話を振ってみた。
「最近ですか?そうですね……」
まさか僕が話しかけてくることなんて無いと思ったのか驚いた様子の瑠璃。
でも、直ぐに顔は緩んで嬉しそうにしている。
「そう。なんかあった?」
「うーん。そんなこと突然言われても……あっ」
「何か思いついたのか?」
「はい。最近ウェブ小説の伸びが良いんですよ」
そう言えば、瑠璃はウェブ小説をメインで書いてるんだったけと思い出す。
「へーそうなんだ。どういう内容なの」
別にそんなにし知りたい訳ではなかったが、とりあえず聞いてみた。
「えー、そんなの恥ずかしくて言えませんよ」
顔を赤らめながらもじもじしている瑠璃。
何だか凄く嫌な予感がする。
「良いから教えろ。ついでに題名も」
かなり強い口調で言ったのだが、瑠璃は怯みはしていない。
だが、元々言いたかったのか話してくれた。
「そんなに知りたいですか?ワタシノコト」
「お前のことじゃなくて、お前の小説のことな」
妙な言い回しをしてきたので一応釘を打っておく。
「ちぇ、良いですよ。教えてあげます。私が書いてるのは泰と私がイチャラブする恋愛小説で、題名は「マイダーリン」です」
授業中だと言うのは承知の上で、こっそり持ってきていたスマホを取り出した。
そしえてブラウザを開いて頭の悪そうな題名を入力する。
すると本当に、出てきた。
試しにあらすじを読んでみると、かなりやばい。
さすが人気作家なだけあって、表現力はプロ顔負け。
それが悪い方向に転んで、これアウトじゃねと思うレベルになっていた。
とりあえず通報するべく、リンクを探す。
「雪本さん何しているんですかぁ?」
僕が必死に画面を見ていると、それが仇となったのか背後から池田先生の声が聞こえてきた。
「あ、いやー(汗)」
「とにかくこれは没収しますね。放課後職員室に取りに来てください」
それだけ言い残すと、僕が弁解する暇すら与えずに去っていった。
「え?なんで私をそんなに睨んでいるんですか?」
瑠璃は自分がやったことをわかっていないらしい。
「だって、授業中にスマホを使う泰が悪いんじゃないですか」
「ちげーよ!いや、違くないけど今回はそのことじゃねぇよ。僕が言ってるのはあの小説のこと」
「ああ、あれですか。どうですか気に入ってもらえましたか?」
「え、なに?頭の中お花畑なの。違うでしょ。なんであんなの僕の許可も取らずに勝手に書いてるの。しかも僕の実名だし」
せめて、偽名かなんかにしろよ。
これだと普通に恥ずかしんだけど。
「書きたかったからですけど。泰のことを思うと自然に筆が動きました。ポッ」
「あ”ーーー、頬を赤らめる擬音をそのまま口で言うな!」
「泰うるさいわよ」
いつの間にか隣に来ていた加納が入ってくる。
それで気づいたのだが、めっちゃ周りから見られていた。
「あ、あの、お騒がせしましった。あははは」
僕はダメ元で周りの人達に謝っておく。
クラスの人達なら、いつものことかくらいに思ってくれるかもしれないが、残念ながら知らない人もちらほらたので今後通行人に変な目を向けられるかもしれない。
そう思うと、少し憂鬱だ。
「悪い加納。少し興奮してしまった」
「うん。まあ、私は良いんだけれど」
僕は反対を向き再び瑠璃の方を見る。
「で、あれは消せ」
「嫌です。」
そうだろうな、とは思っていたがやはりその考えは正しかったようだ。
「なら、せめて非公開で一人で楽しめよ」
本来ならそれでも嫌だが、まあ1人で勝手に妄想するくらいなら仕方ないだろう。
僕にそれを咎める権利もないし。
「なるほど。泰は私と2人きりが良いんですね。わかりました。非公開で楽しみたいと思います」
まるでわかってないようだったが、もう諦めた。
「う、うん。それでお願い」
これ以上瑠璃とはなしをするのは疲れそうだったので、残りの時間は加納と世間話でもしておいた。




