132話 部活動リレーじゃダメですか?
夏の暑さもピークを過ぎ、季節はすでに暦の上では秋になった。
いくら秋とは言っても、気温はまだまだ高く過ごしやすいわけでは無いのだが。
それでも、時折きれいな秋刀魚雲が澄み渡る空に広がる日もあり、季節を感じることはあった。
さて、この時期といえばなんだろうか?
はい、そうです。体育祭の時期です。
文化部員にとっては最悪な行事の1つなのでは無いだろうか。
僕はまあ、運動は嫌いでは無いが、好きでもないのだが。
今日も今日とて文芸部室。
「さて、今年も体育祭が開催されるわけだが、今回こそは部活動リレーで優勝したい。いや、優勝する。必ず」
勝手に決めて、勝手に言い切る皆越先輩。
言ってしまえば、いつもどうりの先輩だ。
「嫌ですぅー」
1番に反対したのは、見るからにして運動が苦手そうな瑠璃だ。
「そんなことを言わずに。な?」
「優勝って言っても、できるんですかそんなの」
「任せておけ。私も弥久も足にはかなり自身があるぞ」
自身があったところで、所詮文化部だろうと思う。
仮に先輩たちが勝負できたとしても、僕と特に瑠璃は確実にお荷物になるだろう。
それを背負ってなお勝てるとは到底思えない。
「いろいろ考えているようだが、安心しろ」
「いや、安心しろと言われてもやっぱり僕たちに勝ち目は無いと思うんですが」
僕が、納得できないでいると弥久先輩が話しに入ってきた。
「まあ普通そう思うのかしらね。でも大丈夫よ。ほら、部活動リレーってその部活をあらわす道具とかを持って走るでしょ。運動部は文化部へのハンデとして、かなり重たいもの持たされるのよ。野球部だったピッチングネットとか、サッカ部だったらフットサル用のゴールとか。だから毎年結構、良い勝負になるのよ」
え?ちょっとまって。今持ち物として、おかしいもの入ってた気がするんだけど。
嘘だよね。
それで良い勝負するとかうちの運動部化け物ばっかりだったりするの?
怖いんだけど。
「それにだ。私達のバトンはなんだと思う? ほらこれだ」
皆越先輩は、めっちゃ使い込まれて3センチ位になった鉛筆を渡してくる。
「これが、うちの文芸部に伝わる鉛筆だ」
「あれ、この部って皆越先輩が私利私欲で作ったって聞いたんですけど。というか、うちの部って瑠璃以外誰も小説書かないじゃないですか。それなのに鉛筆って卑怯でしょ」
せめて薄い本とかにしようよ。
いや、そのままの意味だよ。ページ数が少ない本って意味で。
ほら氷菓とか薄いじゃん。
「卑怯じゃ無い。戦略だ」
「そうですか……まあでも、短すぎじゃないですか。それより普通に新品の鉛筆とかのほうが使いやすいと思うんですけど」
「それもそうだな」
皆越先輩は、あっさりと納得して持っていた短い鉛筆をゴミ箱に投げて見事シュートを決めていた。
「大切な鉛筆じゃなかったのかよ……」
「うっ。まあ、当日は私達が敵を引き離すから、お前たちは好きにしてて良いぞ。とは言っても、本番で怪我しないくらいには練習しておいてほしいがな」
「はい、わかりました」
瑠璃は耳を塞いで聞こえないを装っていたが、どうせ聞こえているだろう。
突然走って肉離れでもされたらかなわない。
無理やりにでも引きずって練習させておこう。
そんな感じで僕たちの体育祭練習が始まった。




