131話 嫌いじゃダメですか?
説明が終わった頃には、ちょうどバスが学校に到着していた。
帰り道。
渋滞のせいで帰りの時間がかなり押してしまい、帰る頃には日の長い夏なのに真っ暗になっていた。
「その、聞いちゃってごめんね」
「そんなに気を使わなくても良いよ……」
「うん……」
加納はうつむいてしまう。
なんと声をかけたら良いかわからないのだろう。
だが僕に関してみれば知ったことではない。
僕も彼女も一言も話さないまま帰り道を歩いていく。
「私も泰のことが好き、かも……」
何を言うかと思えば爆弾を投下してきた。
「僕は君のこと嫌いかな」
自分で言ってながら意地悪だったかなと思う。
でも、事実なので後悔はしていない。
そもそも、僕と彼女の出会いが悪かったのだ。致し方ないことだと思う。
「わかってる……」
悪いことをしているつもりは無いとは思っていいるのだが、やはりこういう態度を取られてしまうと罪悪感を感じてしまう。
「私が自分勝手なことを言ってるってことも、わかってる」
「ならどうして?」
そんなことを言っても同仕様もないことなんてわかってのことだろう。
「わからない?」
「良いから教えろよ」
意識せずとも、怒りのこもった声になってしまった。
しかし加納はそれに動じることなく答える。
「そんなの決まってるでしょ。言わずにはいられないからに」
「言わずにはいられない?」
僕は加納の言葉に引っかかりを覚え、復唱する。
「そう。あんた、そんなこともわからないの。はぁ、瑠璃が可愛そうよ」
「お前が言えることじゃないだろう」
「あんたが言えることでも無いと思うけどね」
僕は言っている意味がわからなかった。
「そういうところでは私もあんたも変わらないってことね。好きって言わずにはいられないっていうのが恋ってもんでしょうが」
そう言われてここ最近のことを思い出す。
瑠璃のことはもちろんだったが、弥久先輩のこと。そして当然加納のことも。
思い当たる節はたくさんあった。
「そうかも知れないな」
そうだとすれば、自分の皆越先輩への思いは何なのだろうか。
僕にはその資格が無いのかもしれない。
「あんたが何思ってるかわかるわ。でもまあ、人それぞれだと思うから誰がどういう思いの寄せ方をしていても、これが正解って言うのは無いんだと思う」
「思うって……随分と曖昧だな」
「仕方ないじゃない。だって曖昧なことの話をしているんだから。ね?」
「そうかな……」
慰めてくれるが、やはり自身が持てない。
「私はあんたのことが大好きよ。・・・・・・。でも、だからといって、あんたが私じゃ無い誰かを思う気持ちのほうが弱いなんてことは無いわ。もちろん、私がそれに劣っているなんてことも思ってないけど」
そこまで言われてようやく、卑屈になっていたことに気づく。
僕は、女の子に何を言わせていたのだろう。
全く情けない限りだ。
気がつけば、もう家の前まで来ていた。
気を張っていたから、思ったより時間が立っていた。
「そう言えば、加納ってここから家近いのか?」
気にしてなかったが、こっちの方に一緒に歩いてきたからきっとこの近辺なのだろう。
「あ、えーっと。うん近くだよ」
焦りと戸惑いがまじり、セリフを読んでいるようになっている。
「うそ付いてるだろ」
「うん……」
「どこ?送っていくから」
僕が尋ねても、言って良いものかと悩んでいるようで、直ぐには答えてくれなかった。
しばらく時間が立っても、僕が譲る様子がないと悟るとようやく教えてくれた。
「えっと、あっち」
彼女が、指差したのは今さっき歩いてきた方向。
つまり反対方面だ。
「まったく、馬鹿。早く行くぞ、遅くなったら怒られるんじゃないのか」
「良いよ、こんな時間だし」
こいつは、言っている意味がまるでわかっていない。
「こんな時間に1人で歩かせられないって言っているんだよ。何かあったときの僕の身にでもなってみろ」
もし攫われでもしようものなら、少なくとも数ヶ月は立ち直れない自身があるぞ。
「うん、ごめん。じゃあ行こっか」
僕の心配を他所に、嬉しそうな加納。
僕はそれに気づかないふりをしてさっさとあるき出した。
後ろを歩かせるのは流石に危ないかとも思ったが、直ぐに横に並んできたのでその心配は必要なかったようだ。
「やっぱり僕は、お前が嫌いだよ」
「そうはどういう意味」
全く、敏いやつは本当に嫌いだ。
「それくらい自分で考えろ」
「うんわかった!」
嬉しそうに笑う加納。
この様子を見ると本当にわかってしまったようだ。
やっぱり僕は彼女が嫌いだ。




