127話 寝不足じゃダメですか?
結局一睡もできないまま、あさが来た。
正確に言えば、多少は寝ることができたのだが、ようやく寝れたと思ったが矢先、起床の放送がなり無理やり起こされた。
寝不足で熊ができた自分の顔を見ながら顔を洗い、朝礼に出る。
この状態で立ちっぱなしは流石にきつい。
ラジオ体操は死ぬかと思ったが、なんとかやり遂げることができた。
ボクガンバッタ。ボクエライ。
朝礼が終われば順番に食堂に移動して、朝食となる。
入る前に、予めあたっておいた水筒にお茶を入れてから手を洗う。
朝食は、バイイング形式となっていたが昨晩のことで流石に食欲が無い。
それはメンタル的なものもなくは無いが、やはり寝てないので体力的にきつい。
流石に、食べないのもどうかと思ったので、バターロールを1つだけ取って席につく。
代わりと言ってはなんだが、砂糖を多めに入れたコーヒーを持ってきた。
「泰、おはようございます。隣良いですか」
「ああ……」
瑠璃の挨拶を適当に流しながらパンを咥える。
「・・・・・・?」
瑠璃がこっちを見てきていたのでどうしたのだろうかと首をかしげてみた。
「あっ、すみません。でも、いつもと違うように見えたので」
「寝不足でな」
まあ、嘘は言ってない。
実際、顔色が悪い理由の殆どは寝ていないことが原因だ。
寝ていない理由もあるのだが、それは瑠璃だけには言いたくない。
誰に対しても言いたくないのだが、特に言いたくないと言う意味だ。
「いえ、寝不足と言いますか、なんか悩んでますか?何なら私が相談に乗りますが」
「いや……いい、大丈夫だ」
普段のほほんとしているのに、こいつは変なところで鋭い。
内心、本当は知ってるんじゃないかとヒヤヒヤしながら、申し出を断った。
「そうですか。わかりました」
いつもグイグイ来るのに、今回はおとなしかった。
本当に踏み込んではいけないところまでは入ってこない。
それは、優しさと呼べるものなのか定かではないが、僕を少なくとも今安心させるのには事足りた。
瑠璃はそれから食べ終わって部屋に戻るまで、話しかけて来ることはなかった。
もし僕から話しかけたとしたなら、喜んで会話をしてくるだろうとは思う。
だが、僕にはそんなことできる勇気はなかったのでそうはならなかった。
「結局なにか言えたのか?」
部屋に戻る時、正明が話しかけてきた。
「全然……」
「はぁ……、全く。後に回すとどんどん言いにくくなるだけだぞ。いい機会じゃないか。今日中にちゃんと自分の気持を伝えるんだな。まあ、俺は関係ないからどうでも良いけど」
僕は無言で頷く。
正明はどうでも良いといったが、それは嘘だろう。
それが事実だとしたならば、普通こんなに気にかけてくれないだろう。
「なんか、ありがとな」
「知るかよ。お礼言ってる暇があったら行動しろ」
彼は僕より先を歩いてたので表情は見えないのだが、でもその背中は少し照れているように見えた。




