124話 にわか雨はダメですか?
迷子になり、来た道を戻っているとこだった僕たちだったが雷の音を聞き足を止めた。
足元が悪く、下ばかり見ていたので気づかなかったが空に真っ黒な雲が広がっていた。
「やばいですねっ!」
某ゲームのモノマネをする。ちなみにめっちゃ似てない。
「その言い方だと大丈夫そうに聞こえるからやめろ」
なんだかんだ言っているうちに滝のような雨が降ってくる。
いくら夏だと言っても山の中で、しかも雨も降っていれば寒さを感じる。
瑠璃はちゃっかりとカッパを着用済みだった。
「やっべっ、雨具忘れた」
鞄を漁っていた正明が言う。
「俺もだ」
コイツラは何をしているんだと思いつつ、カッパを取り出そうとして気づいた。
「僕もだ……」
人のことを言っておきながら、自分も忘れていた。
まあ、おそらくにわか雨だろうし、雨が上がれば体操服はすぐに乾くだろう。
雨宿りできそうなところも探しては見たのだがなさそうなので仕方がない。
「こんなところで止まってても、どうにもならないし進むか。第一止まっているより歩いている方が体温が保てるだろ」
念の為皆を見て準備が良さそうか確認をする。
しかし、加納に目を向けて直ぐにそれをそらした。
その、なんというか、動きやすいように皆体操服を着ているわけで……。特に夏の体操服ともなれば、雨に濡れると、直視できない状況に……。
他の皆は、本人すらも気づいてないようだった。
僕は加納に耳打ちをする。
「ちょっと言いにくいんだけど……」
「なに?」
やはり状況がわかっていないのだろう、のほほんとした返事が帰ってきた。
「すけt・・・といいますか、その……」
言いにくいからもごってしまったのが悪いのだろう。
うまく伝わらなかったみたいだ。耳打ちのまま続ける。
「だから、ぶr、下着が透けてるって言ってるんだよ」
「ーー⁉」
見る見るうちにゆでダコのように顔、いや、体までもが赤くなっていく加納。
気持ちはわかる。
「ほら、これ着ろ」
僕は脱いだジャージを押し付ける。
「え?いや、でも」
「仕方ないだろ、これしか無いんだから。嫌とか言ってる場合じゃないだろ」
嫌いなやつの服を着るのは受け入れ難いだろうと言うことはわからなくもない。
それでも、着ないよりはましだろう。なにせ見えてるから。
「嫌というわけじゃなくて、むしろ嬉しいと言うか。あっ、これはもちろんそのままの意味で、変な意味じゃないからね」
何を言っているのかわからないが、とりあえず受け取って着てくれた。
「その、ありがと……」
聞き逃してしまいかねないほど小さく、つぶやかれたそれを僕は聞き取ることができた。
隣に居てこれだから、他の奴らには聞こえているということは絶対に無いだろう。
「どういたしまして」
僕もつぶやく。
小さな声で言ったのに特に意味など無い。
無理やり理由を作るとするならば、別にそれを本人に伝える気がなかったとかだろうか。
加納が、僕の言葉に反応して頷いた気がしたが真偽の程はわからない。
ただたんに、下を見ただけかもしれないし、横目で見ただけなので見間違えかもしれない。




