120話 自然の家はダメですか?
夏の山なんて、虫が居るし熱いし足場は悪くて登りにくい。
そう思っている自分がいました。
でも、実際にバスから降りれば、思ったほど熱くもなく涼しい風が吹き抜けていく。
その風が木々を揺らし爽やかな音となる。
胸いっぱいに美味しい空気を吸い込むと、これも悪くないと思えてくる。
そして、突然背中に走る激痛。
「ぐぅふっ!」
さっき吸い込んだばかりの息が強制的に排出されて、生物としてダメな音が出る。
「そんなぼーっとしてないで早く行きますよ」
瑠璃の後ろ姿を見れば、どうやらボストンバックで殴られたみたいだった。
文句を言うために瑠璃を追いかける。
「なんで殴ったんだよ」
「だって、意識が朦朧としているみたいだったから、この世に呼び戻してあげたんじゃないですか。お礼を言って然るべきですよ」
「せっかくの自然を堪能してたんだよ。それを邪魔しやがって」
「あら、それは残念でしたね」
他人事みたいに言うのがムカついたが、それを言ったところで無駄だろうということは想像が付く。
自然の家についてまずやったことは、開会式だった。
曇ってはいたが、幸い雨は降っていないので広場で開かれた。
その後に、ホールに場所を移して施設の説明や注意事項だった。
その間瑠璃は振り返って僕をずっと見ていたので、めっちゃ施設の人に睨まれていた。
瑠璃を睨むのはわかるが、僕にそんな目を向けないでほしい。
僕はあくまでも彼らと同じ被害者なのだから。
蒼井瑠璃被害者の会でも開こうかな。
そしたら意外と打ち解けて仲良く慣れるかもしれない。
そうだ、加納もいれてやろう、そうしよう。
そんなくだらないことを考えているうちに説明は終わっていた。
今からはとりあえず部屋に荷物を置きに行って、また集合するらしい。
僕は保健係だったので、リネン室にシーツを取りに行ってから部屋に向かった。




