11話 お弁当を作って来たらダメですか?
今日こそは部活に顔を出すと決意し登校してきた。今まで毎日部室に通っていたが2日さぼるだけで豪く行きにくくなったものだ。
4時間目終わりのチャイムが鳴り、昼休みになる。食堂へ行く生徒は号令が終わると一目散で教室から出ていった。僕も昼食を取るべく机横に掛けておいた弁当箱に手を伸ばす。しかしその手は見事に空振った。
もしやと思って見てみると弁当を忘れていたのだった。
「(しまった、今から売店行っても間に合わないだろうな)」
わずかな望みにかけて席を立つ。そして教室の異変に気付いた。なんだかいつもより騒がしかったのだ。クラスメイトの「あれって3年生だよね」という声が耳に入ってきた。
廊下の方を見ればそこに居たのは皆越先輩だった。
先輩は僕を見つけると笑顔になりこっちに来いと手を振っていた。
先輩に付いて行くと部室まで来た。
「先輩どういうことですか?」
「あの時はしっかりお礼できなかったからな……」
「お礼ですか?」
「そうだ。それでお弁当でもと思って作ってきたんだが、迷惑だったか」
そう言うと先輩はカバンの中からかわいい弁当風呂敷に包まれた弁当箱を机の上に出した。
「迷惑だなんてとんでもないです」
途端に花を咲かせたように表情が明るくなる先輩。その笑顔を見れてうれしいはずなのになぜか苦しくなる。ただしそれが表に出ないように必死に隠す。
「でもお礼だなんて別に良かったですのに」
「これは私のせめてものお詫びでもあるんだ」
包みが開かれると色鮮やかな弁当が見えた。色からしてとても美味しそうだ。
「ほら、あーん」
先輩は、おかずを箸に取るとそれを僕の口元へ寄せてきた。
「じ、自分で食べれます」
かろうじて理性を保つことができた自分をほめてあげたい。
先輩から箸をひったくりおかずを食べる。優しい味付けでとても美味しい。
「よかった、喜んでくれたみたいで」
「何かすみませんでした。いろいろ気を使わせたみたいで」
「気にすることないさ。こうしてここへ来てくれただけで満足だよ」
「それにしても先輩、料理上手だったんですね」
「下手そうに見えたか?」
「いえ、なんでもできそうだから欠点とか何のかな~なんて思って」
「欠点か……そうだな、昔から人と接することは得意ではないな」
「え?」
その言葉に驚愕する。何せ先輩は初めて会った時から人見知りするようなそぶりは見せなかった。
「そんなに驚くか(笑)まあ君の前では威厳を保たないといけないから頑張ってるんだよ」
「なんか先輩にも苦手なことがあって安心しました。同じ人間なんだなって」
「なんだ?私を化け物か何かだとでも思っていたのか?」
かわいらしく膨れて見せる先輩。普段見せない幼さとあざとさは完全に目に毒だ。
このままだと先輩をまた好きになってしまいそうなので、適当に話題を変える。
「今日からまた部活に行きますね」
4日開いただけだというのに、久しぶりな気がした。
「ああ、まっているよ」
ころあいを見計らっていたように、昼休みの終わりを告げる鐘がなる。
そろそろ戻ろうと準備をして席を立つ。部室の唯一の出口である教室後ろのドアまで行き手をかける。
「泰君……」
その時、呼び止めたのは皆越先輩だった。半分開いたドアをそのままに振り返ってみる。
「その……良ければ、また弁当作ってきてもいいだろうか?料理は好きなんだが、生憎食べてくれる人がいなくてな。君はおいしそうに食べてくれるし、嬉しかったんだ。無理にとは言わないが」
また皆越先輩の手料理が食べれるなら正直嬉しい。しかし同時に後ろめたさもあるのだ。それに、臆病にも部活を選んだ僕が今更その決断を変えるなんて都合がよすぎる。
「嬉しい提案ですが、お断りさせてもらいます」
「そうか……」
さっきの雰囲気が嘘のように暗くなる。この答えは間違っていたのではないだろうかという考えが巡り午後の授業は全く頭に入ってこなかった。
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