115話 見つけないとダメですか?
もう残された時間はそれほどない。
気持ちが焦るばかりで、一向に進展はないように見えた。
しかし、これでけ探せばたとえ混んでる場所でも1人位は見つかるものである。
これまでと同じように、すれ違う人を確認していると弥久先輩とすれ違った気がした。
慌てて振り返ってみると向こうもこちらを探していたのか同じく振り返ってきていて、目があった。
「先輩探しましたよ」
「良かった見つかって。後で気づいたら電話つながらなくて」
先輩も同じ理由で僕たちを探していたようだった。
「2人は?」
僕がそう聞いても、弥久先輩は首を横にふるだけだった。
タイムリミットは10分。
今まで探して、1人しか見つかって無いことを考えると絶望的に思えた。
しかし、先輩は諦めてないようだ。
「どうしたの泰?探すわよ」
先輩はずんずん人混みの方へと進んでいく。
ついていかなければ、また見失ってしまうので仕方なく隣を歩いた。
今まで大通りの方ばかり探していたのだが、それがいけなかったのかと思い少し道をそれ探すことにした。
少し離れただけだと言うのに、先程と比べるとかなり静かだ。
遠くに笛太鼓の音が聞こえるくらいだろう。
代わりに、囁き声が聞こえる。
照明が少ないため少し薄暗い。
だから、気づくのが遅れたがこんなところでも人は意外といるらしかった。
注意深く見れば気がついた。
僕たちは今カップルの群れの中に居たのだ。
「先輩ここって……」
「あ、うん。」
先輩も気づいたのだろう。
ただでさえ僕たちの関係は複雑なのだ。
こんなところに居て気まずくないわけがない。
皆越先輩と瑠璃がここにいる可能性は低いだろうし、さっさと離れようとしたとき閃光のあとに轟音が響く。
時間を見れば打ち上げ時間になっていた。
一瞬気を取られた僕だったが、まだ間に合うかもしれないと思い止めていた足をあげようとする。
しかし、それをやめた。
前に進もうとしたのだが、それを止める反対の力が働いたのだ。
それは決して大きな力ではない。
むしろか弱く、意識しなくとも簡単に振り切れてしまいそうなほどの。
でも、僕の歩みを止めるにはそれで十分だったようだ。
僕は弥久先輩の方を振り返る。
腕を掴むには勇気が足りなかったのか、先輩は服の裾を少しだけつまんでいた。
「いかないで……」
先輩の髪が夏の柔らかい風でふわりと揺れる。
色とりどりの光で照らされた先輩の顔は、悲しさと寂しさをあわせたような不安顔だ。
目元がほんのりと輝いたのは、花火のせいでは無いと思う。




