114話 謝罪しちゃダメですか?
人数を倍にして探し出してみたものの、そう簡単に見つかることはなかった。
祭りの賑わいとは正反対に静かな僕たち。
あれからというもの特に会話がなされることはなかった。
残り時間は30分ほどになった。
今までノンストップで探していたが、夏の暑さと人の熱気もありだいぶ疲れてきた。
僕は目に入った屋台でラムネを2本買う。
「ほら、これやるよ」
そしてその片方を加納に渡した。
しかし微妙な表情をしたまま受け取ろうとはしない。
「もしかして嫌いだった?」
「いや、そういうわけでは……」
それならと、彼女の方に更に差し出す。
だが、やはり受け取ろうとはしなかった。
「まったく。上げるって言ってるんだよ。熱中症にでもなったら困るのは僕なんだからな」
そこまで言ってようやく受け取ってくれた。
「確か200円だったよな……」
財布から小銭を取り出そうとする。
「あーもう、言わないとわかんないの?お礼だよ、探すの手伝ってくれているお礼。先に渡しとけば頑張らざる得ないだろ?」
加納は元気のなさそうな笑い声を出す。
「雪本はやっぱり優しいな。だから瑠璃も……いや、なんでも無い」
そして良いかけてやめた。
瑠璃とはなぜだかあんなことがあったのに仲良くしている。
そこで何か話すことがあったのかもしれないが、僕に知る由もないし、知る気も無い。
加納は電球の切れかけた提灯を見ている。
ラムネにはまだ口をつけていない。
「あのさ、あの時は本当にごめん。すまなかったと思ってる」
あのときとは、瑠璃のことをバカにしたときのことだろう。
今思えば僕もかなり冷静じゃなかった。
きっと瑠璃のために怒っていたのでは無いのだろう。
自分の為。
そう、自分がバカにされてるみたいで、怒りが湧き、歯止めが効かなかった。
悪いことをしたとは思わないが、みっともなかったとは思う。
しかし、許せるかどうかは別だ。
「謝られても、僕は君を許せない」
加納は黙って唇を噛んでいた。
時折、開きかけてまた噤む。
離れた瞬間見ると血が出そうなほど歯が食い込んだ痕があった。
「僕は瑠璃ほど心が大きくないみたいでね」
「そんなことは……」
言いかけた加納だったが、自分がそんなこと言える立場にないと思ったのだろう。
「そっか……」
加納は何かを決意したように少しだけ前に進み振り返ってきた。
「許してもらえないなら、許してもらえるまでこの罪償わないとな」
彼女は何かを決意したような表情になる。
「私は、みんな探し出すから。雪本は待ち合わせ場所とやらで待ってて」
僕の返事を聞かぬままに飛び出していってしまう加納。
待ってるだけというわけにもいかず、僕はまた1人で探し始めた。
ちょっとぬるくなったラムネはもう不味かった。




