110話 皆越ゆかりじゃダメですか? 5
兄さんがメインで勉強を教えるようになってから初めてのテストがおわった。
これは学校であるようなテストというわけではなく、私が個人的に受けさせられているテストだ。
終わって1週間ほどたつと結果が帰ってきた。
普段から成績が良かった私が、もちろん今回悪いはずもなくいつも通り高得点を収めていた。
今まで満点を取ったことはなかったのだが、見事全科目全問正解だった。
「どうですか?お母さん」
兄さんは結果を見せて、私のお母さんに報告をした。
「どうもこうも、そんなのできて当たり前でしょ?」
兄さんはお母さんにはばれないようにため息をつく。
それには失望の念が含まれているよな気がした。
「当たり前って……少しは頑張ったゆかりちゃんをほめてやりましょうよ」
「ほめるって何を?大体彼方なんなんですか。高々満点を取らせたくらいで。どうせ偶然の産物でしょ」
母はそう決めつけ、話は終わりだと言うように立ち上がろうとした。
それをすんでのところで呼び止める。
お母さんは不機嫌な顔をしながらも、もう一度腰を下ろした。
「高々とは言いましたね。その高々をすらできなかった今までの教師たちは何だったのでしょうね?」
兄さんは少し、いいや、表面上は少しだが、かなり怒っているように映った。
「だから偶然といっているでしょ」
「偶然じゃなかったらどうですか」
お母さんは何を言ってるのか分からなかったのか間抜けにも口をぽかんと開けている。
兄さんは今机に出して見せているのとは違うまた別の成績表を出した。
「これは?」
「これは別で受けたテストですよ。ゆかりちゃんに頼んでもう一個受けてもらっていたのですよ。ちょうど受験できましたし」
目の前に置かれていたから、意識せずともそれを見るお母さん。
そしてその目は見開かれる。
「なっ……」
「どうかしましたか?」
そう、そこに載っていたのは同じく満点の結果だ。
ただ一つ違うとすれば、テストの会社が別のところだと言いう事だ。
なので、当然おんなじ問題なんていうわけではないのだ。
「これで少しは勉強詰めから解放されるな」
あの後は、お兄さんが今後の勉強を全て教えるという事が決まった。
勉強と言っても、ほとんどは本を読んでいるだけなのだが。
時折覗きに来てはさぼっているところを見て愚痴をこぼすお母さんだったが、こちらとて結果を出しているのでそれを突きつけるとおとなしくなって出ていた。
「まあ、そんなこんなで今の私がこんな風になったんだがな」
「話し方とかもそっくりになったんですね」
「どうした?何だか不満そうだな」
「別に」
2人の間には夏のじめじめした風が吹き抜けていた。




