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ライトノベルじゃダメですか?  作者: 東雲もなか
始まりの文芸部
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10話 部活をさぼっちゃダメですか?

 週末明け、あれだけ足しげく通っていた文芸部を初めてさぼっていた。昨日の今日で、顔を出す勇気がなかったのだ。きっと皆越(みなこし)先輩はいつも通り接してくれるだろう。しかし僕はどのように話したらいいかわからなかったのだ。


 このまま幽霊部員になってしまうのかもしれないと思いながら、寝床についた。



 翌朝、スマホを見てみると弥久(みく)先輩からメッセージが来ていた。

[今日の放課後ここで待ってる。必ず来ること!]

 そういう文と位置情報が添付されていた。



 放課後になって、下駄箱に向かう。待ち合わせ場所は、よく知らないカフェのようだったが無視して帰ろうと思う。どうせもう弥久先輩とも関わることはないだろう。

 しかし、自分の下駄箱のところで待ち伏せしていた弥久先輩によってそれは阻止された。


 学校を出てしばらく歩くと目的地へついた。場所は学校から近かったが、隠れ家的なその立地からほかに同じ学校の生徒はいなかった。

 中に入ると、いかにもマスターと言いたくなるような白髪でひげの似合う初老のおじいさんがコーヒーカップを磨いていた。

「おや、弥久ちゃんひさしぶり。しばらく見ないからどうしたのかと思っていたよ」

 マスターのその発言から弥久がよくここを利用しているのがわかる。

「うん、最近ちょっと部活に顔を出してたから。私はコーヒーお願い。あと奥の席借りるね」

「はいよ。それで、そちらのお連れさんどうするのかな」

「僕も同じのでお願いします」



 弥久先輩は奥の席へと行った。そこは、入り口からは見にくく密談をするには最適な場所だった。僕は、弥久先輩の向かい側に腰を下ろす。


「それで、何で昨日は部活に来なかったの?まあ、大体予想はできるけどさ」

「それは……」

「どうせ、ゆかりとのことでしょ?はぁ……」

 先輩は僕の目を真っすぐ見つめたまま、ため息をつく。いつもは見せないような真剣な表情をしていた。

 そんな先輩に昨日有ったことを順を追って話した。



「……と言うことがありまして」

「なるほどね。それはもう……いや、気付いてないならいいや」

 弥久先輩は何か言いかけたみたいだったが途中で口を(つぐ)んだ。

「まあそれは置いといて、明日は部活来なさいよ」


 部活か、もう行けないって思ったばっかりなんだけどな。

「あんたがなに思ってるか知らないけど、ちょっとはゆかりの気持ちも考えなさいよ。ゆかり、あんたが居ないと寂しそうにしてるのよ! もちろん私も……」


 そのあとは、部活に来ることをさらに念押しして先に帰っていった。



 すっかり冷えてしまったコーヒーを飲む。その味はほろ苦かった。


「何かお悩みですかな?」

 そこにはマスターがコーヒーのおかわりを持って立っていた。

「ええ、まあ……色々ありまして」

「なるほどね。ここは人生の先輩として少年に助言をしましょう。君が今1番手に入れたいもしくは手放したくない物は何か考えることです。よく1人を助けるか100人を助けるか、という思考実験などがあるのは知っていますか?その時、両方と答えれば聞こえは良いかもしれないですが現実はそんなに甘くはないのですよ。私たちのできることには限界があります。欲をかけば今持っている大切なものまで失ってしまう。」


「何を得るために何を切り捨てるか。その判断を間違わないことですね」

 今自分の欲しいものとは何なのだろうか。そう思考を巡らせてみる。

 あのファミレスでの出来事を思い返す。皆越先輩の許婚と出会ったとき僕はきっと嫉妬していた。初めて先輩と会ってすぐの時ならこんな気持ちにはならなかっただろう。でも今は……。


 しかし、今はもっとなくしたくないものがある。僕はあの静かなでも賑やかな文芸部が好きだ。先輩への気持ちを捨てきれると言ったら嘘になるかもしれない。それでも、表に出さなければきっと偽りの楽しさを得られるのだろう。それなら僕のとる行動は決まっていた。

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