105話 流星群じゃダメですか?
夜になっても僕は眠れなかった。
それは、昼寝をしすぎたってのもあるかもしれないが、それだけでは無いだろう。
もともと僕は、昼寝をしても夜ねれなくなるということは無いのだ。
「ちょっと夜風にでもあたってくるか」
僕は一人そんなことを呟く。
こういうときほど、誰か居てくれたほうが気が紛れるのだがそううまく誰か居るわけもない。
普段は、あれだけひっついてくる瑠璃も今はすやすや眠っている。
屋敷を出ると、夜とは言えど蒸し暑さを感じる。
さっきまでクーラーの効いた部屋にいたのでなおさらだ。
幸い、昼間ほどの暑さでは無いので我慢できないほどではないのだが。
昼間遊んでいた砂浜を歩く。
波の音が絶え間なく聞こえてくる。
砂浜は足場が悪く、あたりが暗いので見えにくい。
僕は気をつけては居たのだが足を取られて盛大に転んでしまった。
「いてて……」
地面が柔らかいのでそこまで痛いわけでは無いのだがつい、反射的に言ってしまうのはなぜだろう。
「泰君?」
僕が砂浜にうつ伏せていると、皆越先輩のような声が聞こえてくる。
顔を上げてみると、そこに居たのはもちろん皆越先輩だった。
「どうしてこんなところに居るんだ?」
「皆越先輩こそどうしてですか?」
「私か?私は星を眺めてたんだよ。どうも眠れなくてね」
眠れないということは僕と同じように何かあったのだろうか。
普段何にも動じなさそうな先輩からすると少し以外だった。
「僕も眠れなかったので散歩でもしようと出てきた感じです」
「そうか……」
先輩はそれ以上聞くことはなかった。
『…………』
もともと、1人で落ち着こうと思って出てきたのだ。
誰かと話す気分では無い。
しかし、この空気は少し気まずい。
「皆越先輩」
「どうしたんだ」
耐えかねた僕は適当に雑談をお持ちかけた。
「先輩のことだから、別荘とかにも本いっぱい置いてるのかと思いました」
「ああ、そのことか。他の別荘には置いているんだがな。ここは海風で痛むから置いてないんだ」
「先輩らしい理由ですね」
会話が終わってしまった……
こういうときに自らの会話スキルのなさを痛感する。
僕たちは並んで砂浜に寝そべり、星を見ていた。
今日は新月。
だからこそ足元がよく見えなくて転んだのだが……
でも、だからこそ星がよく見える。
「あ、流星群だ」
皆越先輩の声が隣から聞こえた。
僕も集中して宇宙を見ると、見つけることができる。
1つ2つ、3つと次から次にそれは絶え間なく線を引いては、やがて消えていく。
願い事は何にしようかなど考えていると皆越先輩がつぶやいた。
「こんな夜は、あの日を思い出すな……」
「あの日、ですか?」
「ああ。そうだ、聴いてくれないか?どうせ暇だろ?」
僕はうなずく。
先輩が、薄暗闇の中横目で確認するとゆっくりと話しだした。




