103話 話をしにいっちゃダメですか?
瑠璃が出ていってから、暇だったので寝ていたのだがそれも部屋の扉を叩く音で起こされた。
どうせまた瑠璃が来たのだろうと、あえて無視をする。
彼女なら、返事をしなくたってどうせ入ってくるのだ。
そもそも鍵もかけてないから入ろうと思えば入れる。
わざわざ無駄な労力を費やす必要は無いと判断したんだ。
部屋にいれてやろうとしているだけでも感謝してほしい。
しかし、待てど暮らせどその気配はなかった。
不審に思って、自らドアノブをひねった。
そこに居たのは弥久先輩、……と瑠璃だった。
2人は先程と変わらずメイド服。
よく見れば、弥久先輩のエプロン部分は少し濡れているように見えた。
「で?何しに来たんですか?」
瑠璃は兎も角として弥久先輩が来たということは何かしらの理由があると踏んだ。
「…………」
黙り込んでしまう先輩に、困った僕は一旦視線を隣の瑠璃に移す。
「全く、せっかちだと女の子に嫌われちゃいますよ。まあ、私はそんな泰でも愛してますけど。あっ痛たー」
なんだかちょっとイラッと来たのでチョップをかまして置いた。
もちろん手加減はしているので、そんなに痛いはずはない。
瑠璃も痛いと言って頭を抑えているものの、それはあまりにもわざとらしく実際に痛みを感じているわけでは無いだろう。
むしろ喜んでいるように見えることから、僕の行動は逆効果だったかもしれない。
瑠璃の言い方にはほんの少しだけムカついたが、ここで弥久先輩を急かすのも良くないのかもしれないと思う。
「私が居ても、話にくいかもしれませんね。それではっ!」
瑠璃は、そう言い残すと部屋を出ていく。
本当に何しに来たんだあいつ……
弥久先輩はすがりつくような視線を送っていたが、瑠璃ははにかむように笑うと、親指を立ててそのままどこかへ行ってしまった。
『…………』
流石に密室でこの沈黙は気まずいものがある。
この場合彼女の言葉を待つのが正しいのかとも考えたが、空気に耐えかねた僕はこちら側から切り出した。
「その……何か話したいことがあるからここに来たんですよね?」
僕の問いかけに、コクリとうなずく先輩。
「えっと、どういった要件ですか?」
僕はあまり急かしたようにならないようにゆったりと伝える。
「……ごめん、もう少しだけ待って」
先輩はいつもと違うか細い声で言う。
こんな先輩ですら待てないほど僕は鬼ではない。
今度は、自分から話しかけることはせずにただ先輩を待った。




